変形性股関節症の痛みが生じる原因と運動によるリハビリ治療

変形性股関節症は進行すると鼠径部を中心に痛みが発生します。

痛みを生じさせる原因は関節包内因子と関節包外因子があります。

関節包内因子が原因で痛みが生じている場合、セラピストが免荷や運動量の調整を適切に行わないと変形進行を助長し逆に悪化させてしまう可能性があります。

今回は変形性股関節症の変更が進行する機序と痛みが生じる原因、リハビリ内容、手術方法に関して記載していきます。

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変形性股関節症とは

変形性股関節症は、大腿骨頭と臼蓋間の関節軟骨摩耗により関節腔が狭小化し股関節に変形をきたす状態の総称です。

進行すると鼠径部を中心に股関節周囲に疼痛が生じます。

立位関連動作の介助量増大や運動量の低下を誘発することで廃用症候群の発生に直結することが重大な問題点です。

変形性股関節症は一次性と二次性に分類されます。

・原因不明の一次性

・明らかな基礎疾患や構造異常を有する二次性

日本における変形性股関節症は95%以上が二次性の変形性股関節症です。

二次性は以下の基礎疾患と構造異常が大半を占めます。

・先天性股関節脱臼

・臼蓋形成不全

ここが大きなポイントです。

変形性股関節症の変形が進行する原因

正常な股関節は以下の構造により大腿骨頭の圧分散が図れます。

・関節窩が深く形成

・臼蓋の被りが深い状態

変形性股関節症は、二次性の基礎疾患や構造異常に伴う臼蓋形成不全が基盤にあります。

つまり関節窩が浅く臼蓋の被りが少ないことが変形を進行させる主な機序です。

変形の進行度に伴い以下の4つに分類されます。

・前期股関節症

・初期股関節症

・進行期股関節症

・末期股関節症

前期股関節症

前期股関節症は、関節窩が浅いことで臼蓋の被りが少ない状態です。関節軟骨の肥厚は保たれており、痛みは生じません。

初期股関節症

人によっては初期股関節症から動作時に痛みが出現し始めます。

臼蓋の被りが少ない状態下では、大腿骨頭の圧分散が十分に図れず、圧が限局的に集中することにより関節軟骨の摩耗が生じます。

関節軟骨の摩耗は関節腔を狭小化させます。

進行期股関節症

進行期股関節症では関節軟骨の摩耗が更に進行します。

関節軟骨の摩耗が進行すると、生理的に対処しようとして関節窩を広げる骨棘が形成されます。

関節軟骨の摩耗が進行している部位では、関節軟骨と関節腔がほぼ消失し骨がむき出しになります。

そうすると関節液が骨に浸潤し骨嚢胞が生じます。 動作時だけでなく、安静時も痛みが出現する頻度が多くなります。

末期股関節症

末期股関節症では、関節軟骨と関節腔がほぼ消失し骨がむき出しになり骨嚢胞の肥大化を認めます。

この状態下では動作時・安静時共に激しい痛みが生じます。

関節軟骨はほぼ消失している為、生理的な対処は骨の変形で行います。

具体的には、接地面の増大のために大腿骨頭の扁平化が生じます。

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変形性股関節症で痛みが生じる原因

疼痛が生じる機序は以下の2つに分類されます。

・関節内に起因する要因

・関節外に起因する要因

関節内に起因する要因は、関節軟骨の摩耗で軟骨片が関節内を浮遊し滑膜を刺激することで関節包内に炎症が生じることです。

関節外に起因する要因は、股関節脱臼を予防する姿勢保持により腸腰筋や股関節内転筋群の筋肉が過緊張し筋虚血に伴う疼痛が生じることです。

変形性股関節症の立位姿勢

股関節は球関節ですが、構造上前方不安定性が大きい特徴があります。

立位で荷重すると、大腿骨が下から押し上げられ、大腿骨頭が前方突出します。

その際に腸腰筋が軽度伸張されつつ股関節前方脱臼を予防するように作用します。

上述したように、変形性股関節は臼蓋形成不全が基盤にあります。

大腿骨頭と関節窩の接地面が狭小化しており股関節は脱臼しやすい状況下にあります。

そのため腸腰筋を過緊張させ、荷重時における大腿骨頭の前方脱臼を予防する戦略をとります。

長期化すると腸腰筋は短縮位、大殿筋は伸張位で牽引・保持され、骨盤の前後傾が制限されます。

関節包が炎症し痛みが生じている場合、運動量の低下が生じます。

立位関連動作で股関節を使用しない運動の遂行が不可能だからです。

運動量の低下に伴い、赤筋繊維の保有量が多い中殿筋は筋委縮が著明に進行します。

中殿筋は骨盤を平行に保持する作用がありますが、筋委縮が生じると作用が低下します。

その場合、骨盤を平行に保持する作用は股関節内転筋群の過緊張で代償されます。

股関節内転筋群は、股関節内転作用のある以下の6つの筋の総称です。

①大内転筋

②小内転筋

③長内転筋

④短内転筋

⑤恥骨筋

⑥薄筋

股関節内転に貢献する割合が高い筋肉は大内転筋です。続いて長内転筋、短内転筋となります。

大内転筋、長内転筋、短内転筋は坐骨結節と恥骨下枝を起始とし、大腿骨の内側上顆と大腿骨粗線の内側唇に停止します。

股関節内転筋群の収縮は、大腿骨遠位部は内転方向にモーメントが生じます。

大腿骨頭等の近位部には外転方向のモーメントが生じます。

相反する力のモーメントは大腿骨頭が関節窩より離れる方向に作用します。

結果として股関節内転筋群に過緊張により大腿骨頭の脱臼リスクが高まります。

そのため股関節内転筋群は過緊張しつつも大腿骨頭の脱臼を予防するために股関節内転方向への運動制限が生じます。

変形性股関節症の歩様

進行に伴い以下の可動域制限が生じます。

・腸腰筋の過緊張・短縮による股関節伸展制限

・股関節内転筋群の過緊張・中殿筋の筋出力低下による股関節内外転制限

そのため、股関節屈曲の振り出しを主体としたすり足歩行や中殿筋の筋力・筋出力低下に伴うトレンデレンブルグ歩行等が出現します。

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変形性股関節症に対するリハビリ(運動療法)の原則

変形性股関節症のリハビリでは関節内・外の双方にアプローチする必要があります。

・関節包内の炎症に対するアプローチ

・関節外の筋緊張異常と筋力低下に対するアプローチ

リハビリアプローチで最優先すべきポイントは、滑膜の炎症の緩和を図り炎症を消失させることです。

変形性股関節症では、関節軟骨の摩耗により軟骨の破片が関節内を浮遊し関節包を刺激することで、関節包内に炎症が生じ疼痛が発生します。

つまり関節軟骨の摩耗を緩和しない限り、滑膜の炎症は改善しません。

滑膜の炎症を消失させないと股関節の変形は進行します。

関節包内の炎症に対するリハビリアプローチ

炎症の緩和は安静が1番いい方法です。

しかし立位関連動作で股関節は作用するため、日常生活を送る上で股関節の絶対安静は現実的ではありません。

そのため、滑膜の炎症を緩和するアプローチは、股関節への負担軽減を目的に歩行補助具や補高の導入による環境調整を主体に行います。

歩行補助具の選定は、免荷量の大きい歩行器が望ましいです。

家屋状況で使用が困難な方には両手杖の使用や両手伝い歩き等で代用します。

いずれの場合でも両上肢で荷重量を分配し股関節の免荷量を多く図る方法が望ましいです。

同時に、屋内用の靴をはくことに抵抗の少ない方であれば以下の3点を検討します。

・足底板にクッション性の高いインソールの導入

・全面・踵補高の挿入

・外側フレアヒールの導入

免荷により運動負荷は低負荷となります。あとは高頻度とならないように注意しましょう。

環境調整と運動量を調整し、炎症症状を緩和させていきます。

理想的には同時並行で食事療法による体重コントロールを図る必要がありますが、「食べること」は楽しみの1つです。

減量を無理強いするとリハビリ意欲が減退する可能性は高いため無理のない範囲で糖質制限を行っていく方法が望ましいです。

糖質制限のダイエット方法の詳細はこちらです。お時間があったら閲覧ください。

関節包外の炎症に対するリハビリ・運動療法

滑膜の炎症緩和が図れたら関節外のアプローチを実施していきます。

具体的には以下の2点のアプローチを実施します。

・腸腰筋や股関節内転筋群等の過緊張した筋肉の緊張緩和による疼痛軽減

・関節包の癒着予防

関節包外アプローチより先に関節包内のアプローチを行う理由は、炎症症状の増悪を予防するためです。

例えば、変形性股関節症における腸腰筋の過緊張は、大腿骨頭が荷重時に前方突出して脱臼しないよう大腿骨頭を支持する側面をもちあわせています。

腸腰筋の緊張緩和を図ると、荷重で大腿骨が前方突出する距離が増大します。

大腿骨頭の移動距離が増大した分、寛骨臼と大腿骨頭間の関節軟骨の摩耗が増大します。

このように免荷が図れていない状態下での関節包外のアプローチは変形進行を助長させてしまう可能性が高いです。

筋肉の緊張緩和は以下の3つのアプローチを主軸とします。

・ストレッチ

・マッサージ

・物理療法(温熱・寒冷・電気療法等)

同時に関節包の癒着を予防していきます。

関節包の癒着は関節拘縮の主要因の1つです。

関節包が短縮している場合、関節包両付着部の距離を延ばすように徒手で離開・転がり・滑り運動を用いて持続的に伸張させていきます。

関節包が癒着している場合は、超音波療法の温熱作用を用いて組織の伸張性を高めた後に、上述した方法で徒手伸張する方法が望ましいです。

関節包・腱・靭帯・筋膜等の組織はコラーゲン含有量が多い為、超音波を吸収しやすく、加温効果が得られやすい特徴があります。

関節包外の筋の過緊張による疼痛が軽減・消失したら中殿筋等の筋出力低下・筋委縮している筋肉への筋力増強練習のアプローチを行います。

はじめのうちは単関節にターゲットが絞れ、運動負荷量が調整可能なOKCの運動が望ましいです。

低負荷低頻度から開始していきます。

炎症・疼痛の再発・増悪を予防しつつ徐々にCKCの運動量を増やしていき、筋力増強を図っていきます。

炎症や痛みが消失すれば、必然的に日常生活での運動量は増大するため、リハビリ介入内の運動負荷量の調整は慎重に行う必要があります。

OKCとCKCの違いや筋トレ方法の詳細はこちらです。お時間があったら閲覧ください。

変形性股関節症の診断と手術療法

変形性股関節症は、単純X線写真で診断することが可能です。

手術療法は、関節温存手術と関節置換手術があります。

関節温存手術は主に寛骨臼を切って大腿骨頭と寛骨臼の接地面積を広げることで圧分散を図る手術方法です。

切開はしますが、名前通り関節を温存させる手術です

関節置換術は、人工の寛骨臼と人工骨頭に置換する人工股関節全置換術等、関節を人工物に置換する手術方法です。

人工股関節全置換術は深部静脈血栓症や脱臼などのリスクが伴います。

そのため末期股関節症で他の選択肢がない場合に適用されるケースが多いです。

まとめ

変形性股関節症の変更が進行する機序と痛みが生じる原因、リハビリ内容、手術方法に関して記載しました。

変形性股関節症のリハビリは、いかに関節包の炎症を消失させるかにつきます。

関節包に炎症が生じている時期は、筋力増強練習はおろかストレッチや関節可動域練習ですら、慎重に行わないと炎症を助長させる結果に繋がることは覚えておくべきポイントです。

変形性股関節症の理解が深まる一冊がこちらです。

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