脊髄小脳変性症(多系統萎縮症)のリハビリ治療と症状,予後

脊髄小脳変性症は小脳またはその神経線維の変性により運動失調症をきたす変性疾患の総称です。

脊髄小脳変性症は変性疾患の総称であるため、病型により発症年齢の好発や症状、余命(生命予後)が異なります。

今回は脊髄小脳変性症の遺伝性・非遺伝性の分類と症状、生命予後、リハビリ治療に関して記載します。

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脊髄小脳変性症とは?

脊髄小脳変性症は進行性の神経難病です。

有病率は10万人あたり10人前後とされます。

上述のとおり脊髄小脳変性症の代表的な症状が運動失調症です。

運動失調症は脊髄小脳変性症により小脳の3つの機能区分(前庭小脳・脊髄小脳・大脳小脳)が損傷され入力・出力障害、統合機能不能が生じることで出現します。

具体的には以下のような症状が出現します。

①複視・眼振

→前庭小脳の損傷による眼球運動系への運動出力障害が一要因。

②体幹失調(動揺)

→脊髄小脳の損傷による体幹への運動出力障害が一要因。

③四肢の測定異常・反復拮抗運動不能・運動分解

→大脳小脳の損傷による四肢への運動出力障害が一要因。

④筋緊張低下

→大脳小脳の損傷による運動入力情報の統合障害が一要因。

⑤構音障害

→大脳小脳の損傷による大脳皮質への運動出力障害が一要因。

脊髄小脳変性症では小脳性運動失調の他に以下のような症状が出現します

・錐体外路症状(パーキンソン症候群)

・自律神経症状

・抹消神経症状

脊髄小脳変性症は病型により症状が異なります。

以下に脊髄小脳変性症の分類と症状を述べていきます。

脊髄小脳変性症の遺伝性・非遺伝性分類

脊髄小脳変性症は大きく遺伝性と非遺伝性(孤発性)に分類されます。

割合としては遺伝性が30%、非遺伝性(孤発性)が70%を占めます。

孤発性の脊髄小脳変性症の代表核が多系統萎縮症です。

日本の脊髄小脳変性症の中では多系統萎縮症の1つであるオリーブ橋小脳萎縮症が最も多いです。

余談ですが常染色体劣勢遺伝で生じるFriedreich運動失調症は現在、日本人の症例はいないと考えられています。

以下に遺伝性と孤発性の詳細を述べます。

遺伝性脊髄小脳変性症の症状と生命予後

遺伝性脊髄小脳変性症の発症要因は以下の2つに大別されます。

・常染色体優勢遺伝

・常染色体劣勢遺伝

日本における遺伝性脊髄小脳変性症のほとんどは常染色体優先遺伝が要因で生じます。

中でも頻度が高い病型が以下の3つです。

・SCA-3(Machado-Joseph病)

・SCA-6

・歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)

SCA-3(Machado-Joseph病)の症状と生命予後

10~60歳台と幅広い年齢で好発します。

橋核と小脳歯状核が中心に委縮します。

症状は小脳性運動失調、錐体路・錐体外路症状、びっくり眼、自律神経症状、抹消神経症状を呈します。

障害部位の特性上、脊髄後索症状と認知症は通常認めません。

個人差は大きいですが発症から15年前後で車椅子を要します。

生命予後は21年前後とされています。

SCA-6の症状と生命予後

20~65歳前後が好発です。

主に小脳皮質が選択的に障害されます。

そのため症状は小脳運動失調を純粋に示します。

経過は緩徐進行性で生命予後は比較的良好です。

歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)の症状と生命予後

若年から成人まで幅広く発症します。

DRPLAの大きな特徴が表現促進現象です。

これは世代を経るごとに若年で発症し症状が重症化するという現象です。

若年発症ではミオクローヌスてんかんや精神発達遅滞を呈します。

成人発症では小脳性運動失調症、舞踏病、認知症を呈します。

発症時期により異なりますが、DRPLAは遺伝性脊髄小脳変性症の中でも生命予後が不良とされています。

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非遺伝性脊髄小脳変性症の症状と生命予後

非遺伝性(孤発性)脊髄小脳変性症は以下の2つの病型に大別されます・

・多系統萎縮症(MSA)

・皮質性小脳萎縮症(CCA)

多系統萎縮症は以下の3つの疾患の総称であり臨床での治療頻度も高いです。

・オリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)

・線条体黒質変性症(SND)

・Shy-Drager症候群

オリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)の症状と生命予後

中高年以降に好発します。家族内発症はありません。

小脳症状を初発症状とし進行とともにパーキンソニズム、自律神経症状が出現します。

小脳に高度な変性を認めるため多系統萎縮症の中で小脳症状が1番強く出現します。

生命予後は10年以内で突然死の可能性が高いです。

線条体黒質変性症(SND)の症状と生命予後

中高年以降の男性に好発します。家族内発症はありません。

パーキンソニズムを初発症状とし進行とともに小脳症状、自律神経症状が出現します。

被殻・黒質に高度な変性を認めるために多系統萎縮症の中でパーキンソニズムが1番強く出現します。

生命予後は約10年とされています。

Shy-Drager症候群の症状と生命予後

中高年以降に好発します。家族内発症はありません。

自律神経症状を初発症状とし進行とともに小脳症状、パーキンソニズムが出現します。

多系統萎縮症の中で自律神経症状が1番強く出現します。

緩徐に進行し生命予後は7~10年とされています。

脊髄小脳変性症のリハビリ治療

脊髄小脳変性症の代表的な症状である小脳性運動失調、パーキンソニズム、自律神経症状のリハビリ治療を記載します。

小脳性運動失調症のリハビリ治療

小脳性運動失調は感覚入力障害と運動出力調節障害、小脳の統合機能不能により生じます。

そのためリハビリ治療では感覚入力量を増大し小脳の統合機能を再学習させ、運動出力を調節する必要があります。

筋の固有受容器を刺激して神経筋の反応を促通する具体的方法がPNFです。

PNF治療の基本は以下の手法で構成されます。

①3次元の随意運動にてセラピストが徒手抵抗を加え固有受容器刺激し感覚入力量を増大

②徒手抵抗にて神経筋の反応を最適化させ運動出力を発揮

③反復運動による運動学習

重錘バンドや弾性緊迫帯を使用することで一時的に感覚入力量は増大し運動出力のコントロールは図れる可能性はあります。

しかし実生活では重錘や弾性緊迫帯を巻いて生活しません。

そのため重錘バンドや弾性緊迫帯を使用した治療は学習しても日常生活に反映されないという致命的な欠点があります。

結果として、リハビリの即時効果は得られるが、翌日への持ち越し効果が得られないということが大半だと思います。

故にわたしは小脳性運動失調に対してはPNFを用いたリハビリ治療を推奨します。

PNFの概要とパターン、テクニックの詳細がこちらです。お時間があったら閲覧ください。

パーキンソニズムのリハビリ治療

パーキンソニズムの重症度分類には生活機能障害度が用いられます。

パーキンソニズムのリハビリは生活機能障害度別に展開します。

生活機能障害度はⅠ度、Ⅱ度a、Ⅱ度b、Ⅲ度の4段階に分類可能な評価尺度です。

Ⅰ度:日常生活、通院にほとんど介助を要さない。Hoehn&Yahr(ホーン&ヤール)の重症度分類のステージⅠ・Ⅱに相当。

Ⅱ度a:日常生活に部分的な介助を要する。Hoehn&Yahr(ホーン&ヤール)の重症度分類のステージⅢに相当。

Ⅱ度b:日常生活の大半に介助を要する。Hoehn&Yahr(ホーン&ヤール)の重症度分類のステージⅣに相当。

Ⅲ度:日常生活に全面的な介助を要する。Hoehn&Yahr(ホーン&ヤール)の重症度分類のステージⅤに相当。

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Ⅰ度からⅡ度aのリハビリ治療

筋固縮と無動はⅠ度から出現します。

しかし筋固縮と無動に対する根本的なリハビリ治療はないため薬物治療(L-dopa)が主となります。

そのため理学療法ではⅡ度aから症状が本格化する姿勢反射障害の予防と進行遅延を目的としたリハビリを展開します。

具体的には姿勢反射障害で呈する円背姿勢の予防や姿勢矯正を図ります。

胸椎過後弯を呈する機序を以下のような胸椎以下の筋力低下や過緊張、骨性変化で生じます。

・胸椎レベル:僧帽筋中部・下部繊維の筋力・筋出力低下や大胸筋の過緊張が生じると胸椎過後弯が形成。

・腰椎レベル:脊柱起立筋の筋力低下により骨盤前傾が減弱し骨盤後傾。運動連鎖により胸椎過後弯が形成。

・下肢レベル:ハムストリングスの短縮により股関節・膝関節屈曲。運動連鎖により骨盤後傾し胸椎過後弯が形成。

胸椎過後弯が生じると運動連鎖で頭頸部が前方突出します。

その結果、頸椎のみでは支持しきれず頸部周囲筋が過緊張し頭部を支持します。

リハビリ治療では、胸椎過後弯を生じさせる過緊張筋の緊張緩和を図りつつ、筋力・筋出力低下を認める筋の筋力増強を行い円背姿勢の予防・矯正を図ります。

これだけの説明だと伝わりにくい部分もあると思いますのでお時間があったらこちらを閲覧ください。

Ⅱ度aの後期からⅡ度bのリハビリ治療

Ⅱ度aの後期からⅡ度bにかけては姿勢反射障害が本格化します。

姿勢反射障害も骨性の拘縮が主原因で生じることが多く、すくみ足や突進現象の出現頻度が高まります。

リハビリの運動療法では円背姿勢矯正に加え歩行練習と咳嗽強化を展開します。

歩行能力はⅡ度bまで保たれやすく、Ⅱ度bの後期からⅢ度にかけては嚥下障害の発生率が高まることが理由です。

歩行練習では日常生活で導入しているレベルより一段階、歩課題難易度が高い練習を実施します。

咳嗽力強化のリハビリでは相分け別に以下の目的で行います。

・吸気相における肺気量増大→胸郭拡張を阻害する過緊張した筋(肋間筋など)の緊張緩和

・圧縮相における声門閉鎖力増大→プッシングやブリングの息こらえを利用し外側輪状披裂筋と披裂横筋の筋出力及び筋力を増強

・排除相における呼気筋力増大→腹直筋の筋力増強と最大吸気からのブローイングやまき笛を吹くなど複合した吸気相・圧縮相も含めた複合した相の強化

これだけの説明だと伝わりにくい部分もあると思いますのでお時間があったらこちらを閲覧ください。

Ⅱ度bの後期からⅢ度のリハビリ治療

Ⅱ度bの後期からⅢ度では歩行障害を呈し誤嚥性肺炎のリスクが高まります。

リハビリでは歩行練習と誤嚥性肺炎の予防のリハビリを主軸に展開します。

歩行練習では日常生活で導入している歩行レベルで練習を実施し、強い疲労感が生じないよう留意します。

誤嚥性肺炎予防のリハビリでは呼吸・嚥下のリハビリを実施します。

姿勢反射障害で上位頸椎過伸展が保持されると、下顎が引き下がり開口角度が増大します。

持続した開口は口腔乾燥を引き起こし誤嚥性肺炎が生じるリスクが増大します。

マスクの着用やネブライザーの使用で口腔内乾燥を予防しつつ口腔ケアを施行し常在菌を減少させます。

呼吸リハビリでは残存機能に応じ上述したブローイングやまき笛で複合した相の機能強化を図ります。

ベッド主体の生活の場合は体位ドレナージやスクイージングを主体に展開し中枢気道に痰を移動させ喀痰を促通します。

口腔外への喀痰が理想ですが、困難な場合は吸引も併せて施行し呼吸苦の軽減を図ります。

自律神経症状のリハビリ治療

自立神経症状で主問題となるのが起立性低血圧です。

起立性低血圧は臥床から起立への姿勢変換に付随する血圧低下です。

起立性低血圧の定義は起立後3分以内に収縮期血圧が20mmHg以上、拡張期血圧が10mmHg以上の低下です。

症状としてはふらつきやめまい動悸、視野のかすみ、眼前暗黒感が生じます。

重篤化すると失神を呈します。

リハビリでは生活指導と運動療法を併用し実施します。

生活指導では起立性低血圧が生じる場面に合わせ弾性ストッキングの着用や臥位での下肢挙上位を指導します。

運動療法では下腿三頭筋の筋力増強練習や歩行練習を複合し静脈還流量の増大を図ります。

重症例の場合、リクライニングでのギャッジアップ練習や臥位で膝下のみをベッド端から垂らし保持する等の練習で耐久性の向上を図ります。

まとめ

脊髄小脳変性症の遺伝性・非遺伝性の分類と症状、生命予後、リハビリ治療に関して記載しました。

脊髄小脳変性症の方に対するリハビリ治療に貢献できたら幸いです。

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