誤嚥性肺炎の病態生理と原因、予防するリハビリ治療13種

※咳嗽・嚥下は明確に解明されていない部分があり、その中で私なりに解釈・推察した内容を記載しています。あくまで1意見として参考程度に読んで頂けると幸いです。

肺炎発症の90%以上は高齢者です。近年、肺炎は日本人の死因第3・4位まで浮上しており高齢化の進行を反映しています。

肺炎のうち誤嚥性肺炎が約1/3を占めます。今回は誤嚥性肺炎の病態生理と原因、予防を図る具体的リハビリ内容を記載します。

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誤嚥性肺炎の病態生理と原因

肺炎は急性・慢性的に生じる肺の炎症性疾患の総称であり、誤嚥性肺炎(嚥下性肺炎)は肺炎の1つの種類です。

誤嚥性肺炎の機序は大きく3つに分類されます。

➀飲食物・唾液の嚥下時に咳嗽反射は生じるが誤嚥する顕性誤嚥。

②主に睡眠中の唾液嚥下時に咳嗽反射が生じず誤嚥する不顕性誤嚥。

③胃・食道の内容物が気管に逆流して生じる誤嚥。

いずれの機序も飲食物や唾液の侵入が声門上までであれば喉頭侵入、声門下~肺まで侵入すると誤嚥性肺炎と位置づけられています。

誤嚥性肺炎を発症すると発熱、呼吸苦、1回換気量低下による浅呼吸数・心拍数増大、酸素飽和度低下、呼吸補助筋怒張、胸水貯留などが生じ呼吸・循環機能に強い負担が強いられます。

・顕性誤嚥

・不顕性誤嚥

・嘔吐による誤嚥

の病態生理と原因を以下に記載します。

顕性誤嚥の病態生理と原因

顕性誤嚥は口腔内の飲食物・唾液を嚥下した際に嚥下反射の咽頭期における気道防御機構が何らかの要因で破綻した結果、飲食物・唾液が喉頭侵入し声門下~肺まで流入することで生じます。

気道防御機構とは

①飲食物・唾液を嚥下した際に嚥下反射の咽頭期で喉頭蓋による気道閉鎖

②喉頭の前上方への挙上

③仮声帯・声門閉鎖

が生じ気管への飲食物・唾液侵入を予防する機構です。

何らかの要因で気道防御機構が破綻し、飲食物・唾液が喉頭侵入する刺激を延髄が感知すると咳嗽反射が生じて喉頭から飲食物・唾液を喀出します。

このように嚥下反射における気道防御機構と咳嗽反射による喀出力が担保されることで、誤嚥性肺炎の予防が図られています。

顕性誤嚥が生じる主要因は咳嗽反射の咳嗽力低下です。気道防御機構は健常者でも一過性に破綻することがあります。

しかし健常者は咳嗽により喉頭侵入した分泌物を喀出することで誤嚥性肺炎が生じず予防が図れています。

嚥下機能が低下して飲食物・唾液の喉頭侵入数が増大しても、その都度、咳嗽で喉頭外へ喀出すれば顕性誤嚥による誤嚥性肺炎は理論上生じません。

咳嗽力の低下は、食塊・水分・唾液の喉頭侵入時における喀出不十分を生じさせ誤嚥性肺炎に直結します。咳嗽力の詳細は後述します。

不顕性誤嚥の病態生理と原因

誤嚥性肺炎で最も割合が高いのが不顕性誤嚥です 。不顕性誤嚥は明確な定義が確立されていません。

大まかには主に睡眠中の唾液嚥下で喉頭侵入した際に咳嗽反射が生じず声門下~肺に誤嚥することを不顕性誤嚥と位置付けています。

定義が明確にならない理由の1つに遅延した咳嗽反射惹起があります。

喉頭侵入後に遅延して咳嗽反射が惹起した場合、何秒までの遅延を不顕性誤嚥と位置付けるかが不明確です 。

機序も明確に判明されていません。私見では不顕性誤嚥は睡眠時の脳幹部抑制による咳受容器閾値上昇が主で生じると推察しています。

咳嗽は気道粘膜上の咳受容器が刺激を感知し求心性繊維である迷走神経を上行し延髄に到達します。

延髄到達後に延髄から遠心性の横隔神経、肋間神経の神経伝達による声門閉鎖、強制呼気により咳嗽は生じます。

先行研究では、睡眠時に脳幹部は抑制を受けることが示唆されており、咳受容器が刺激を感知して咳嗽を生じさせるまでの閾値が上昇します。

そのため睡眠時に覚醒時では咳嗽反射が生じる量の唾液が喉頭侵入しても咳嗽反射が生じず(もしくは遅延)声門下に唾液が流入し不顕性誤嚥を呈するのではないかと推察しています。

実は、不顕性誤嚥は健常成人でも睡眠中50%前後生じています。

健常者の嚥下機能は正常なため誤嚥量はごく少量で大部分が声門上までの喉頭侵入に留まっています。

健常者が入眠から覚めると咳嗽が生じ、痰や咳として口腔外へ喀出されるため誤嚥性肺炎には至りません。

免疫力が高いことも誤嚥性肺炎の予防に一躍しています。

推察の域を出ませんが、健常成人が不顕性誤嚥を生じる要因の1つに睡眠時無呼吸症候群が関与していると考えます。

理由は睡眠時無呼吸症候群の呼吸パターンにあります。

正常の呼吸パターンでは、入眠時における嚥下直後の呼吸は呼気で再開します。

先行研究では、睡眠時無呼吸症候群の入眠時では無呼吸の後に嚥下が生じ、嚥下直後の呼吸は吸気で再開するパターンが多かったことが報告されています。

唾液嚥下直後に吸気から再開すると喉頭蓋谷から下降した唾液は気管に吸引され喉頭侵入のリスクは上昇します。

睡眠時無呼吸症候群の有無は不顕性誤嚥の絶対条件ではありませんが、有することで健常成人及び障害者が不顕性誤嚥する確率は上昇すると推察します。

また脳血管障害等の基礎疾患が基盤にあると不顕性誤嚥が生じる確率が上昇します。

これは咽頭・喉頭を中心とする感覚障害が生じ感覚受容器の閾値が上がることが一要因です。

結果、喉頭侵入しても咳嗽反射の消失や咳嗽反射惹起が遅延し不顕性誤嚥が生じます。

気管内の逆流で生じる誤嚥の病態生理と原因

嘔吐や逆流性食道炎が基盤となり胃の内容物が逆流し喉頭侵入し声門下に流入することで肺炎が生じます。

気管内の逆流による肺炎は高齢者が多くの割合を占めます。

理由としては胃からの逆流を予防する下部食道括約筋圧が退行性変化で低下するためです。

多量の嘔吐は声門下への誤嚥流入量も増大するため肺炎が重症化する場合が多いです。

肺炎治療は抗菌薬投与の薬物治療が主体ですが、肺炎が繰り返されて抗菌薬を投与し続けると薬効が減少する耐性菌が出現します。

耐性菌が蔓延すると肺炎は長期化・重篤化し命に関わります。

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誤嚥性肺炎を予防する13種類のリハビリ治療

顕性誤嚥に対するリハビリ治療

顕性誤嚥のアプローチの最優先事項は咳嗽力の強化です。

喉頭侵入した飲食物・唾液を咳嗽により喉頭蓋に喀出できれば誤嚥性肺炎が生じないことが理由です。

随意的な咳嗽は

①吸気相

②圧縮相

③排除相

で構成されます。

吸気相とは?

吸気相は吸気筋の収縮による深呼吸で肺気量を増大させることを目的とした相です。

咳嗽は空気を圧縮した力のため吸気相で肺気量が増大した分、強力な咳嗽が発揮できます。

圧縮相とは?

圧縮相は吸気相に吸気した気量を気道虚脱で逃さないよう胸腔内圧と気道内圧を高め圧縮することを目的とした相です。

具体的には、声門閉鎖が生じた直後に腹直筋、肋間筋が主体に筋収縮することで胸腔内圧と気道内圧を高めます。

圧縮相では特に声門閉鎖が重要です。声門閉鎖が不十分だと空気の逃げ道が生じ、気道虚脱による咳嗽力低下に直結することが理由です。

排除相とは?

排除相は、声門から圧縮した空気を一気に放出することで咳嗽を生じさせる相です。

具体的には、声門解放と横隔膜弛緩が生じたタイミングで腹直筋を主体とした強制呼気筋が強く収縮し咳嗽を生じさせます。

随意的な咳嗽力の指標には最大呼気流量(Cough peak flow:CPF)が用いられます。CPFは随意的な咳嗽における息の強さを表す指標です。

測定するにはピークフロウメーターという専用機器を用います。

最大吸気位から随意的に最大の咳嗽を2~3回試行し最大値を最大呼気流量として選択する場合が多いです。

ピークフロウメーター測定の絶対条件として対象者が指示従命可能であることが挙げられます。

先行研究では自己喀痰には240l/min以上、誤嚥性肺炎を生じさせない為には140L/min以上のCPFが必要であることが報告されており1つの指標となります。

咳嗽力強化には吸気相における肺気量増大、圧縮相における声門閉鎖力増大、排除相における呼気筋力増大が必要となります。

吸気相における肺気量増大のアプローチ

吸気相における肺気量増大アプローチは胸郭拡張を阻害する過緊張した筋の緊張緩和が主になります。

特に円背姿勢は胸郭拡張を妨げる重要因子です。

円背の姿勢改善は制限因子によりリハビリアプローチ可能か否かが決定されます。

制限因子が骨性の場合、手術適応であり、リハビリでの姿勢改善は困難です。

しかし制限因子が筋性や関節性の場合、大胸筋の過緊張の緊張緩和や肩甲骨外転位の是正が可能です。

緊張緩和後に脊柱起立筋・僧帽筋中部、下部、多裂筋を中心に筋力強化することで姿勢改善が図れる可能性があります。

円背に対するリハビリの詳細はこちらです 。お時間があったら閲覧ください。

肩甲骨は付着する筋が多く、運動方向の決定は筋収縮に依存します。

そのため肩甲骨の運動制限是正は、作用筋の過緊張と拮抗筋の伸張位保持の改善を主軸に実施すると効果的です。

また胸郭拡張は肋間筋の短縮や過緊張でも大きく制限されます。

肋骨間に両指先端を滑りこませ肋骨間を軽く離開しつつ持続伸長させることで肋間筋の緊張緩和を図ります。

胸郭拡張の指標は胸郭拡張差です。

最大吸気と呼気後における胸囲の差を腋窩部、剣状突起部、第10肋骨部の3部位で測定します。

リハビリ介入後に胸郭拡張差の数値上昇を認めたら、即時的に肺気量が増大したと認識できます。

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圧縮相における声門閉鎖力増大アプローチ

声門は披裂軟骨の回転運動により開閉します。披裂軟骨内転は声門閉鎖、外転は声門開口に作用します。

披裂軟骨内転は外側輪状披裂筋と披裂横筋の求心性収縮と等尺性収縮によって生じます。

リハビリアプローチではプッシングやブリングによる息こらえを利用し外側輪状披裂筋と披裂横筋の筋出力及び筋力増強を複合的に図ります。

具体的には

・壁を5秒前後持続的に押す

・両手を前で組み5秒前後持続的に左右外側へ引く

などの方法が簡易的かつ効果的です。動作中は強い息止めを行います。

バルサルバ効果による血圧上昇に留意しリスク管理しつつ行ってください。

声門閉鎖の指標には最長発生持続時間(Maximum Phonation Time:MPT)が用いられます。

MPTは最大吸気時から母音(アー)を持続発声した時間です。

先行研究では、MPT9秒以下は呼吸機能や声門閉鎖に異常がある一指標であることが報告されています。

また誤嚥性肺炎が生じないために必要なMPTのカットオフ値は10.3秒であることが報告されています。

排除相における呼気筋力増大アプローチ

排除相における呼気筋力増大アプローチは腹直筋の筋力増強練習を主体に実施します。

しかし経験上、咳嗽力低下者の問題点は排除相よりも吸気相の吸気不十分と圧縮相の気道虚脱が主であることが多いです。

そのため排除相単体の相分け練習を選択するよりも、吸気相・圧縮相を複合した以下のような練習方法が望ましいです。

・最大吸気からのブローイング(コップに水をいれストローで泡立つよう努力呼気する)

・最大吸気から風船を膨らませる(課題難易度が高ければまき笛を使用。もしくはまき笛を切って使用)

複合した相を絡めた練習の方が、相対的に咳嗽力の強化に繋がることは多いですし効率的に強化が図れるため推奨します。

高頻度のブローイングによる過呼吸に留意しリスク管理して行ってください。

不顕性誤嚥に対するリハビリアプローチ

不顕性誤嚥の理想的なアプローチは嚥下機能・咳嗽機能の向上です。

健常者同様、入眠から覚めた時に喉頭侵入に留まっている微量の唾液を咳嗽により喉頭外へ喀出できることが理想です。

しかし臨床上、不顕性誤嚥を繰り返し発症されている方は脳血管疾患などで呈する高次脳機能障害が基盤にあります。

そのため重度意識障害が遷延しているなどの理由で指示従名困難、積極的アプローチが行えない場合が多いです。

その場合、不顕性誤嚥を生じさせない、又は再発させない予防の観点のアプローチが主軸となります。

具体的方法として、口腔常在菌を減少させる口腔ケアによる衛生保持、開口による口腔内乾燥予防のマスク着用、ネブライザーの導入が挙げられます。

特に開口による乾燥は口腔衛生を阻害する重要因子です。 開口は頚部後屈に伴う運動連鎖で生じます。

頚部後屈は、僧帽筋上部繊維の過緊張・短縮による上位頸椎過伸展による機序が主です。

僧帽筋上部繊維に対し二指圧迫法のマッサージや持続伸長、筋膜リリースを行うことで即時的な緊張緩和と可動域増大を図れます。

増大した頚部前屈可動域をベッド上・車椅子上のポジショニングで持続・延長させます。

筋短縮や過緊張が著明で関節間が連結されている場合は骨盤後傾を徒手で誘導することで運動連鎖により頚部前屈が生じやすくなります。

このように頚部後屈姿位による開口を是正し頚部前屈姿位を担保することが不顕性誤嚥予防の重要なアプローチ方法の1つとなります。

運動連鎖に関する詳細はこちらです 。お時間があったら閲覧ください。

逆流による誤嚥に対するリハビリアプローチ

逆流性食道炎に対するアプローチ手段は手術療法、薬物療法、日常生活指導、姿勢改善が挙げられます。

根本的解決としては手術療法が有用です。腹腔鏡手術が主流であり胃食道接合部の弛緩是正を図る事で逆流を抑制します。

逆流性食道炎が生じた際の炎症を抑制する方法に薬物療法と食生活指導が挙げられます。

薬物療法で胃酸分泌の抑制を図ります。

食生活では過食、カフェイン・アルコールの過剰摂取等、胃酸分泌を促進させる飲食物の摂取や摂取方法を控えるよう指導します。

逆流性食道炎が生じた際に肺炎を予防する方法に環境調整が挙げられます。胃酸は液体のため重力に従います。

入眠時の枕を高くすることで食道入口部の位置が相対的に高くなり喉頭侵入を予防する効果があります。

逆流性食道炎が臥位以外に座位や立位で慢性的に生じる方の場合、姿勢改善のアプローチは有用です。

上述したように胃酸は重力に従います。逆流性食道炎は重力に抗する現象です。

そのため円背のように胃食道接合部と喉頭の距離が縮まれば逆流性食道炎による逆流距離は延長され結果として喉頭侵入するリスクは増大します。

このように胃食道接合部と喉頭の距離が縮まる姿勢を呈する場合は姿勢矯正が有用的なアプローチとなります。

まとめ

誤嚥性肺炎の病態生理と原因、予防を図る具体的リハビリ方法を記載しました。

正直なところ機序を中心にこじつけ感は否めません。ただ、その中である程度は理論に基づき記載したつもりです。

あくまで推察の域をでませんが、嚥下や咳嗽、腰痛等の機序が明確になっていない事象を理論的に考えることはとても勉強になり興味深く面白いです。

同時に、誤った理論や知識を読者に提供することは絶対に避けなければならないことも重々認識しています。

記載した記事に誤りがないことが理想であり、そのためにも日々努力し今後も自己研鑽に励みます。

情報量が多い中ここまで読んでいただきありがとうございました。

参考文献

弓野大:「誤嚥性肺炎のリスクとしての咳嗽力の臨床的意義」2016

上川紀道、他:「咳嗽の最大流量に影響を与える因子」日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌第26巻、第2号、200-203、2016

山川梨絵、他:「肺痰能力を判別する cough peak flow の水準 -中高齢患者における検討-」

人工呼吸、第27巻、第2号、260~266 2010

山田好秋:「嚥下を制御する神経機構」Niigata Dent.J.29(1):1-9,1999

日野峻輔:「睡眠時の末梢刺激応答性の変化に関わるグリシン受容体機構の検討」埼玉医科大学雑誌 第41巻 第2号別項 平成27年3月

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