筋緊張亢進が生じるメカニズムと緊張緩和のリハビリに関して

筋緊張の実態の把握が不十分のまま臨床に臨んだ経験はありませんか?

筋緊張を理解するには、情報を簡素化しメカニズムを把握する必要があります。

今回は筋緊張を理解することを基盤とした上で、痙性麻痺のメカニズムと効果的な治療アプローチも記載していきます。

実際に臨床経験1年目の理学療法士に下記の内容を説明し理解が得られた経験が何度もあります。最後までお付き合い頂けると幸いです。

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筋緊張の概要

筋肉が収縮・弛緩すると筋の伸び・縮みが変化します。

筋緊張とは筋肉の伸び・縮み(張力)が適度に緊張して保たれている現象」です。

筋肉は筋と腱が結合して構成されています。

筋には筋収縮・筋緊張に関与する以下の2つの組織が存在します。

・「筋紡錘(錐内筋繊維)」という筋緊張を調整する組織

・「錐外筋繊維」という筋収縮・弛緩を行う組織

腱には筋収縮・筋緊張に関与する1つの組織が存在します。

・「腱紡錘」という筋緊張を調整する組織

「錐内筋繊維」と「腱紡錘」が筋緊張を調整する理由は、筋や腱が伸ばされ過ぎて断裂が生じないよう調整する必要があるからです。

「錐内筋」は筋肉が伸ばされ過ぎることを調整します。

筋が伸ばされ過ぎると筋断裂が生じるため、「錐内筋」が「錐外筋」へ伸びすぎないよう指示します。


逆に「腱紡錘」は筋肉が縮みすぎることを調整します。

筋が縮みすぎると、腱が伸ばされ過ぎて腱断裂が生じるため、「腱紡錘」が「錐外筋」に縮み過ぎないように指示します。


錐内筋は「錐外筋へ伸びすぎないよう」指示し、腱紡錘は「錐外筋へ縮み過ぎないよう」指示します。

しかしこの指示は筋や腱の間で行われるものではなく、脊髄を通して行われます。

脊髄-筋紡錘間、脊髄-腱紡錘間における「指示経路」が神経線維です。

脊髄-筋紡錘間の指示経路に関与する神経線維

脊髄-筋紡錘間の連絡経路は以下の2つに分類されます。

・筋収縮を行うα運動ニューロンを中心とした神経線維

・筋収縮の程度を調節するγ運動ニューロンを中心とした神経線維

脳が筋収縮を指令すると、指令は以下の2つの経路通じ下降して脊髄に到達します。

・錘体路

・錐体外路

錐体路と関与する神経線維

錘体路は筋収縮しなさいというシンプルな指令を脊髄のα運動ニューロンに伝達します。

α運動ニューロンがα繊維を通じて錐外筋(骨格筋)に指令を伝達することで筋収縮が生じます。

α繊維が発火(興奮)すれば筋収縮が強まり、抑制されれば筋は弛緩します。


錐体外路と関与する神経線維

錐体外路は筋断裂が生じないように筋収縮の程度を調整しなさいという指令を脊髄のγ運動ニューロンに伝達します。

γ運動ニューロンはγ繊維を通じ指令を筋紡錘の錐内筋繊維へ伝達します。

錐内筋繊維は筋肉がどれだけ伸ばされているか把握する繊維です。

錘内筋繊維は筋肉の伸張程度を把握した後、把握した内容を求心性繊維であるⅠa群繊維とⅡ群繊維を通じ、脊髄のα運動ニューロンへ情報伝達しα運動繊維の興奮と抑制を調整します。

この中でα運動ニューロンを抑制させる主の神経繊維は錐内筋刺激である(筋の長さに関与する)Ⅱ群繊維です。


上述した、筋が伸ばされ過ぎると筋断裂してしまうため、「筋紡錘」が筋肉に伸びすぎないよう指示する具体的な神経線維の働きは

①錐内筋繊維で筋が伸ばされ過ぎていることを感知。

②Ⅰa群繊維が興奮しα運動繊維が発火(興奮)することで筋収縮を生じさせ筋断裂を予防すると理解できます。

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脊髄-腱紡錘間の指示経路に関与する神経線維

脊髄-腱紡錘間の連絡経路がⅠb繊維です。

筋収縮が生じ、腱紡錘が伸張された時、Ⅰb繊維が興奮することでα運動ニューロンを抑制させ、腱断裂を予防します。


痙性麻痺で筋緊張亢進が生じるメカニズム

痙性麻痺は錘体路障害と認識されている方も多いですが、少し語弊があります。

純粋に錘体路のみ障害されれば筋収縮低下・困難により弛緩性麻痺を呈するからです。


錐体路障害による筋緊張低下に対するリハビリアプローチはこちらです。お時間があったら閲覧ください。

むしろ痙性麻痺は、内包の損傷により錐体外路が障害された結果、α運動ニューロン・α繊維を抑制するⅡ群繊維の機能が破綻し筋緊張亢進を認めることが実態です。


Ⅱ群繊維の抑制が外れたことにより、ほんのわずかな筋伸張(筋断裂が生じない筋伸張)でも、「筋断裂が生じる!」と錐内筋が誤認します。

その結果、筋断裂を予防する為にⅠa群繊維が興奮し、α運動繊維が発火することで更なる強い筋収縮が生じます。持続した筋収縮に伴い筋緊張は亢進します。

Ⅰa群繊維は主動作筋に興奮性の刺激を送り、拮抗筋には抑制性の刺激を送ります。

この刺激によって生じる拮抗筋の弛緩を相反神経抑制といいます。

つまり筋緊張が亢進している筋は、少しの筋伸張で更に緊張が亢進しやすい状態下にあり、拮抗筋は更に弛緩しやすい状況下にあります。

これが痙性麻痺で筋緊張が亢進するメカニズムです。

痙性麻痺(筋緊張亢進)に対するリハビリ治療アプローチ

痙性麻痺に対するリハビリ治療アプローチの原則

①目標となる動作を阻害(介助量増大)する筋緊張亢進している筋肉の緊張緩和を図る。

②拮抗筋の筋力増強練習により主動作筋の緊張緩和を図る。

③緊張緩和で新しく得られた関節可動域を反映させた主動作筋の筋力増強練習・動作練習を行う。

④動作練習は運動をイメージした状態下で行い運動学習を促す。

具体例を通じて今までの筋緊張の話を整理する

(具体例)内包出血で痙性麻痺を発症。

麻痺側下腿三頭筋の筋緊張が亢進し、裸足歩行で麻痺側遊脚期を通じたトゥクリアランスの低下と麻痺側IC時の軽度足尖接地が問題点。裸足歩行自立が目標。

下腿三頭筋の筋緊張亢進は、Ⅱ群繊維の抑制が外れ、Ⅰa群繊維が興奮し、α運動繊維が発火(興奮)、持続的な筋収縮が生じている状態です。

またⅠa群繊維は下腿三頭筋に興奮性の刺激を送り、拮抗筋である前脛骨筋に抑制性刺激を送っており、前脛骨筋の筋出力が低下していると解釈できます。

つまりこの症例の場合、下腿三頭筋の筋緊張を緩和すると共に、前脛骨筋の筋収縮を促し、筋出力を向上させる必要があります。

下腿三頭筋は痙性麻痺で筋緊張亢進しやすい筋肉の1つです。

下腿三頭筋がなぜ筋緊張亢進するのか?下肢伸展パターンとの関係性に関する記事はこちらです。

具体例に対するリハビリ治療アプローチ

筋緊張亢進の緊張緩和を図る「Ⅰb抑制テクニック」

Ⅰbテクニックとは腱部を5~10秒、持続的に圧迫・伸張する方法です。

今回の例では下腿三頭筋の腱部を持続圧迫します。私は親指での圧迫が実施しやすいです。

Ⅰbテクニックが筋緊張亢進を抑制する機序としては、Ⅰbテクニックで他動的に腱部が伸張されると腱断裂を予防するためⅠb繊維が興奮しα運動ニューロンを抑制するためです。

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筋緊張緩和を図るストレッチ

下腿三頭筋を持続伸張することで筋節数を増大させ、筋肉の柔軟性を担保します。

筋節数を効率よく増大させるには筋腱移行部を伸張する必要があり、スタティックストレッチ下で等尺性収縮を行うことが推奨されています。

スタティックストレッチ・ダイナミックストレッチに関する概要・方法、相違点はこちらです。お時間があったら閲覧ください。

ここでは片麻痺者でも行いやすい椅子座位でのストレッチ方法を記載します。

具体的には椅子座位になり麻痺側足関節背屈位にて自重を加え持続伸張します。

拮抗筋である前脛骨筋の筋力増強練習

下腿三頭筋の緊張緩和が図れたら、拮抗筋である前脛骨筋の筋力増強練習を実施します。

随意収縮が不十分の場合は、低周波治療(電気刺激療法)を行います。

個人差が大きいですが、経験上50Hz前後の強さで10分程度行うと筋収縮が得られやすいと感じています。

前脛骨筋の筋力増強練習方法としては、椅子座位にて麻痺側足部のつま先あげを行う方法が簡易的かつ有用です。

非麻痺側足尖で麻痺側足部に体重(抵抗)を加えつつ行うと運動負荷が増大します。

緊張緩和で新しく得られた関節可動域を反映させた動作練習

最後に下腿三頭筋の緊張緩和で新しく得られた関節可動域を反映させた動作練習を運動イメージを保有しつつ実施し学習を促します。

下腿三頭筋の筋緊張亢進が緩和されたら、足関節背屈角度が一時的に増大し関節可動域が新しく得られます。

新しく得られた関節可動域を活かした以下の動作練習を実施します。

・麻痺側遊脚期を通じた下腿三頭筋の遠心性収縮を促す練習

・麻痺側のヒールロッカー機能を担保する為の遠心性収縮から求心性収縮への切り替え練習

具体的にはトゥクリアランスとヒールロッカー機能を担保するステップ練習を実施します。

設定として前方か側方に鏡を設置します。

麻痺側遊脚期のトゥクリアランスの保持とヒールロッカー機能の担保を意識し、視覚でフィードバックします。

課題難易度が低い平行棒から開始し徐々に課題難易度をあげる方法が望ましいです。

対象足部のPsw~LRまでのステップ練習を反復して行い運動学習を促します。

まとめ

筋緊張と痙性麻痺のメカニズム、リハビリ治療アプローチに関して主に記載しました。

脳卒中片麻痺の方をアプローチするのに筋緊張の知識は必須です。

筋緊張に関与する神経線維は一見難しく思えますが以下の4つの働きが分かれば、暗記ではなく理解として記憶に残ります。

・錘体路

・錐体外路

・筋紡錘

・腱紡錘

筋緊張に対する苦手意識が少しでも払拭され臨床でのアプローチに活かすことができれば幸いです。

最後に筋緊張の理解が深まる一冊を紹介します。

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