低周波治療器を用いたリハビリ(電気刺激療法)の効果と禁忌

リハビリの物理療法アプローチの1つに低周波治療(電気刺激療法)があります。

一般的に低周波治療(電気刺激療法)はマッサージ効果や腹筋の筋トレ効果のイメージが強いかと思います。

しかし、個人的に低周波治療の特筆すべき効果は徒手療法のリハビリでは行えない筋収縮の促通だと思っています。

今回は低周波治療(電気刺激療法)の目的と効果、作用、禁忌、理学療法の臨床における使用感を記載します。

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低周波治療(電気刺激療法)とは?

リハビリの臨床上、低周波治療は主に以下の2つをさします。

・経皮的電気刺激療法(TENS)

・神経筋電気刺激療法(EMS)

TENSもEMSも低周波を用いた電気刺激の治療方法です。

具体的には、低周波治療器を用いてパルス電流(一瞬だけ流れる電流)を繰り返し体内に流す治療法です。

TENSとEMSが何が違うかというと大まかには目的が異なります。

TENSは主に皮膚への触覚刺激を目的とし、EMSは筋収縮を目的とします。

そのためTENSとEMSでは低周波治療器の周波数と電流量が異なります。

低周波の単位は(Hz:ヘルツ)で表記されます。

ヘルツは1秒間に何回パルス電流が流れたかを表す単位です。

例えば50Hzの場合、1秒間で50回パルス電流が流れます。

厳密に見解が統一されていませんが、1Hz~300Hzまでが低周波に分類されます。

周波数は低周波・中周波・高周波の3つが存在します。低周波はHzが低い周波数です。

低周波治療(TENS)のリハビリ目的と効果

TENSのリハビリは主に疼痛緩和目的です。

以下にTENSで疼痛緩和が図れるメカニズムを記載します。

筋肉は過緊張による短縮位や、持続伸張で牽引され伸張位保持されても疼痛が出現します。

筋肉が過緊張に陥ると、筋内圧が上昇し筋虚血状態に陥り細胞への酸素供給量が不足します。

その結果、強力な発痛物質であるブラジキニンが産生・拡散し侵害受容器の興奮度が高まることで疼痛が発生します。

筋肉が伸張位で保持されると、筋内血管が筋繊維に圧迫され筋虚血状態が生じます。

その結果、上述したように、細胞への酸素供給量が不足しブラジキニンが産生・拡散し疼痛が発生します。

この筋虚血状態により生じる疼痛に対し低周波治療(TENS)は効果を発揮します。

TENSにより対象の筋肉にパルス電流が流れると筋収縮が生じます。

TENSのパルス電流が流れなくなると筋肉は弛緩します。

筋肉の収縮・弛緩を繰り返し(筋ポンプ作用)はマッサージ作用と同等の効果があります。

筋ポンプ作用は発痛物質のブラジキニンを押し流します。

その結果、筋虚血が改善し疼痛が緩和されます。

経験上150Hz前後の周波数で10~15分程度施行すると疼痛緩和が図れることが多いです。

筋虚血による疼痛の詳細はこちらです。お時間があったら閲覧ください。

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低周波治療(EMS)のリハビリ目的

EMSのリハビリ目的に主に以下の4点です。

①筋緊張亢進の緩和

②筋トレ

③筋委縮進行の遅延

④浮腫軽減

以下にEMSの効果とメカニズムを記載します。

低周波治療(EMS)のリハビリ効果

相反神経抑制による筋緊張亢進の緩和作用

まず相反抑制を簡易的に説明します。

主動作筋の筋収縮の強度はα運動繊維の興奮度に依存します。

α運動繊維の興奮度の調節は錘内筋のみで考えるとⅠa群繊維とⅡ群繊維が担っています。

このうちⅠa群繊維は筋収縮の程度に応じ主動作筋に興奮性の刺激を送り、拮抗筋には抑制性の刺激を送ります。

Ⅰa群繊維の刺激により生じる拮抗筋の弛緩を相反抑制といいます。

神経線維と筋紡錘、腱紡錘の詳細はこちらです。お時間があったら閲覧ください。

低周波療法では電気刺激により拮抗筋の筋収縮を促通することでⅠa群繊維を刺激し相反抑制を生じさせることが可能です。

具体的には、拮抗筋に対し50Hz前後の強さで15分~20分程、低周波療法を実施します。

拮抗筋の最大収縮が起こる程度の強さが理想ですが、経験上70Hz前後でも痛みの訴えが聞かれることが多いです。

筋収縮作用による筋トレと随意収縮促通効果

相反抑制と重複する内容がありますが、主動作筋の筋トレや随意収縮促通目的でも低周波療法は活用できます。

例えば脳卒中痙性麻痺では前脛骨筋の随意収縮が困難なことが多いです。

その場合、低周波療法で前脛骨筋の筋収縮を生じさせることにより前脛骨筋の随意収縮が促通されます。

この治療は下腿三頭筋の筋緊張亢進を緩和する相反抑制の側面を持ちあわせます。

具体的には、前脛骨筋に対し50Hz前後の強さで15分程、低周波治療を実施します。

筋委縮の程度や拮抗筋の筋緊張亢進の程度により個人差があります。

痛みが強く出現しないようにHzを調整してください。

脱神経筋に対する筋委縮の進行遅延効果

筋肉は支配神経が損傷されると急速に筋委縮が進行します。

先行研究で末梢神経が損傷されてから4週間、筋委縮は著しく進行することが示唆されています。

低周波療法では電気刺激により筋収縮を促通することで脱神経筋に対する筋委縮の進行を遅延させる効果があります。

ただし神経の再生や再生の促通は低周波療法では困難です。

一例として腓骨神経麻痺が挙げられます。

腓骨神経麻痺では完全麻痺と不全麻痺でアプローチ方法が異なります。

腓骨神経麻痺の概要やリハビリに関する詳細はこちらです。お時間があったら閲覧ください。

筋ポンプ作用による浮腫軽減効果

下腿三頭筋は筋ポンプで重力に逆らい静脈血流を心臓に戻す作用(ミルキングアクション)があります。

そのため下腿三頭筋の筋力低下は浮腫を生じさせる一要因となります。

低周波療法で下腿三頭筋の筋収縮を促通することで筋ポンプ作用による浮腫の軽減が図れます。

具体的には下肢挙上位にて下腿三頭筋に対し50Hz程度の強さで15分~20分程度パルス電流を流します。

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家庭用低周波治療器のおすすめ商品

最近では家庭用の低周波治療器も普及されてきました。

家庭用低周波治療器(TENS)のおすすめ商品はオムロンです。

オムロンは安価な上に幅広い周波数が設定可能で凡庸性が高い商品です。

家庭用低周波治療器(EMS)のおすすめ商品はEMSエクササイズマシーンです。

こちらも安価で気軽にご自宅での自主練習として活躍が期待できる商品です。

在宅においても手軽に低周波治療が行えることは非常に大きなメリットです。

その反面、使用方法を理解しリスク管理を徹底する必要があります。

低周波治療器の使用方法

低周波治療器の物品により詳細な方法が異なる可能性があるため、使用手順に関しては付属の説明書に従って下さい。

あくまで一般的な方法を以下に記載します

1.電極を肌に密着させます。男性で体毛が濃い方は、電気刺激を阻害する要因になることがあります。

2.電源を入れ出力を徐々に上げつつ電極を動かしてモーターポイント(筋収縮が誘発されやすい部位、筋腱移行部が多い)を探します。

3.モーターポイントを決定したら、出力と時間を調整します。

低周波治療(電気刺激療法)の禁忌

家庭用の低周波治療器も含めた低周波治療の主な禁忌事項は以下の通りです。

実際の使用に際しては医師の指示の下実施してください。

・ペースメーカー装着者

・静脈血栓症を認める

・血栓静脈炎を認める

・重篤な不整脈を有する

・心疾患を有する

理学療法の臨床における低周波治療器の使用感

低周波治療の特筆すべき点は徒手療法では行えない筋収縮の促通だと思います。

特に軽度の脳卒中で裸足歩行が目標の方は必ずといっていいほど、麻痺側の足関節背屈と足関節外反の筋収縮を促通する必要があります。

足関節背屈と足関節外反はそれぞれ前脛骨筋と腓骨筋群が主動作筋ですが、筋体積が小さく収縮のイメージもし難いことも相まって随意収縮が困難である場合が多いです。

その際に治療アプローチとして有用な方法が低周波治療で前脛骨筋と腓骨筋群の筋収縮、随意収縮を促通する方法です。

低周波治療を行っていなかったら代償歩行の出現や裸足歩行で退院できないと推察される方は多くいました。

まとめ

低周波治療(電気刺激療法)の概要や目的、効果と作用、禁忌、臨床での使用感を記載しました。

自宅でも手軽に低周波療法が行える時代です。

必要に応じて低周波治療を自主練習に昇華することで、リハビリ介入では他のアプローチによる相乗効果が期待できる点も低周波療法の強みの1つだと思います。

低周波治療(電気刺激療法)の理解が深まる一冊

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