脳卒中片麻痺で生じる下肢伸展パターン歩行の原因とは?

※脳卒中の症状は多岐にわたり個別性が重要な疾患であるため、あくまで数ある見解の内の1つという観点で読んで頂けると幸いです。

脳卒中片麻痺(痙性麻痺)歩行で下肢伸展パターンが出現するとトゥクリアランスが低下します。

トゥクリアランスが低下した結果、麻痺側遊脚期でトゥドラッグが生じやすくなり転倒リスクが高まります。

今回は、脳卒中片麻痺(痙性麻痺)で下肢伸展パターンが出現する理由に関して記載していきます。

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下肢伸展パターンの概要と原因

下肢伸展パターンとは以下の関節運動が複合して生じる運動パターンです。

・股関節内転

・股関節内旋

・股関節伸展

・膝関節伸展

・足関節底屈

・足関節内反

下肢伸展パターンを生じさせる関節複合運動の機序は立位動作時における下腿三頭筋の筋緊張亢進だと推察しています。

はじめに痙性麻痺で下腿三頭筋の筋緊張亢進が生じる理由を述べていきます。

痙性麻痺で下腿三頭筋が筋緊張亢進する理由

立位保持は支持基底面内の安定性限界の中央に身体重心の投影点が近づくほど安定します。

健常者の足関節に着目すると、下腿三頭筋は前脛骨筋と比較し筋面積が大きく赤筋繊維(ヒラメ筋)が豊富です。

下腿三頭筋の詳細の作用や機能はこちらです。お時間があったら閲覧ください。

そのため安静立位では下腿三頭筋を遠心性収縮させ足関節背屈位で保持し姿勢制御する戦略をとっています。

下腿三頭筋の筋紡錘(錐内筋繊維)は足関節背屈の程度、つまり自重による下腿三頭筋の伸張に応じ、Ⅰa群繊維とⅡ群繊維を介してa繊維の興奮・抑制を調整し筋収縮を調節しています。

痙性麻痺は錘体路障害と認識されている方も多いですが、実はそうではありません。

純粋に錘体路のみ障害されれば筋収縮低下・困難により弛緩性麻痺を呈するからです。

むしろ痙性麻痺の実態は、内包の損傷により錐体外路が障害された結果、α運動ニューロン・α繊維を抑制するⅡ群繊維の機能が破綻し筋緊張が亢進することです。

群繊維の抑制が外れたことにより、自重で下腿三頭筋にわずかな筋伸張(筋断裂が生じない筋伸張)が生じても、「筋断裂が生じる!」と錐内筋が誤認します。

その結果、筋断裂を予防する為にⅠa群繊維が興奮し、α運動繊維が発火することで下腿三頭筋に更なる強い筋収縮が生じます。

持続した筋収縮に伴い下腿三頭筋の筋緊張は亢進します。

Ⅰa群繊維は

・下腿三頭筋に興奮性の刺激を送り

・拮抗筋の前脛骨筋には抑制性の刺激を送ります。

この刺激によって生じる前脛骨筋の弛緩を相反神経抑制といいます。

これが痙性麻痺で下腿三頭筋が筋緊張亢進するメカニズムです。

筋緊張の詳細はこちらを参照に記載していますので閲覧して頂けると幸いです。

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下肢伸展パターンが生じる理由

下腿三頭筋の筋緊張亢進は運動連鎖で股関節・膝関節伸展方向へのモーメントを発生させるため、股関節・膝関節単一での分離運動が困難となります。

その結果、以下の複合した運動パターンが形成されます。

・股関節伸展

・膝関節伸展

・足関節底屈(下腿三頭筋の筋作用)

・足関節内反(下腿三頭筋の筋作用)

次に正常歩行における下腿三頭筋に着目します。

ヒラメ筋はMst~Tstにかけて遠心性収縮しつつ足関節背屈を制御することで、下腿の安定性を確保します。

一方で腓腹筋はTst時にプッシュオフによる蹴りだしを行い前方への推進力を生じさせ下肢を円滑に前方へ振り出すモーメントを発揮します。

下腿三頭筋の筋緊張亢進で腓腹筋による蹴りだしの機能が破綻した場合、Mst後期かTstで腸腰筋の求心性収縮による、股関節屈曲が行えれば、麻痺側下肢を前方に振り出すことが可能です。

しかし下肢伸展パターンでは、上述した機序で大殿筋の筋緊張亢進を認めることが多いです。

その場合、相反神経抑制により、拮抗筋の腸腰筋にはⅠa群繊維は抑制性の刺激を送っているため、腸腰筋は筋出力が発揮しにくい状況下にあります。

そのため股関節屈曲動作に代替する方法で上下肢の重心を前方移動させる必要があります

具体的方法として、はじめにLR~Tstで麻痺側骨盤後方回旋から体幹前傾により上半身の重心を前方移動させます。

その状態から麻痺側遊脚期を通じて腰方形筋の求心性収縮により腰椎側屈・骨盤拳上させトゥクリアランスを確保します。

トゥクリアランスを確保しつつ下半身の重心を前方移動させるために股関節内転・内旋筋を求心性収縮させ下肢を振り出します。

この歩行戦略を繰り返すことにより以下の複合した運動パターンが形成されます。

・腰椎側屈(腰方形筋)

・股関節内転

・股関節内旋

上記の機序により以下の関節運動が複合して生じ下肢伸展パターンの形成が確立されます。

・股関節伸展

・膝関節伸展

・足関節底屈

・足関節内反

・股関節内転

・股関節内旋

まとめ

脳卒中片麻痺(痙性麻痺)で下肢伸展パターンが出現する理由に関して記載しました。

痙性麻痺の方へアプローチするのに筋緊張の知識や下肢伸展パターンの理解は大切です。

記事内容を客観視すると多少のこじつけ感は否めないというのが正直な感想ですが、アプローチを深める一助となれば幸いです。

下肢伸展パターンが要因で生じる分回し歩行の概要と歩様改善のリハビリの詳細はこちらに記載してありますので、お時間があったら閲覧ください。

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