関節に水が溜まることを関節水腫といいます。関節水腫は関節内に炎症症状が生じていることを表すサインです。
関節水腫の原因と水を抜く方法について膝関節を例に記載します。
膝に水が溜まる関節水腫の原因
まず関節内構造を整理します。
関節包は
・外側の繊維膜
・内側の滑膜
の二層で構築されています。
滑膜は滑液を分泌し関節軟骨に栄養を与えます。通常、滑液はリンパ管より吸収され関節内を循環します。
膝に水が溜まる関節水腫の原因は滑液の過剰分泌です。
過剰に分泌された滑液はリンパ管で吸収しきれず関節内に貯留し関節が腫脹します。これが膝に水が溜まっている状態です。
滑液の過剰分泌は関節軟骨の摩耗により生じた軟骨片を除去する(押し流す)ため生じる生理的現象です。
軟骨片が関節内を浮遊し滑膜を刺激すると炎症が発生します。
炎症緩和のため滑液が過剰分泌します。
膝関節では以下の2関節に関節摩耗が生じる可能性があります。
・大腿脛骨関節(大腿骨と脛骨間)
・膝蓋大腿関節(大腿骨と膝蓋骨間)
圧が限局的に集中することにより関節軟骨が摩耗し膝に水が溜まります。
大腿脛骨関節の関節軟骨が摩耗する理由
大腿脛骨関節は構造上、骨性支持のみでは関節の脱臼を予防できません。
そのため、大腿四頭筋を中心とする筋肉と前・後十字靭帯、内外側側副靭帯を中心とする靭帯で脱臼予防しています。
退行性変化で靭帯の補強力が低下すると筋肉を過緊張させて脱臼を予防する戦略をとります。
大腿四頭筋は赤筋・白筋繊維の割合上、以下の協調性破綻が生じやすいです。
・白筋繊維が豊富な大腿直筋と外側広筋が過緊張
・赤筋繊維が豊富な内側広筋は筋委縮
内側広筋の萎縮と外側広筋の過緊張は、股関節の外転・外旋を誘発し大腿骨内側部と脛骨内側部に圧が限局的に集中します。
大腿骨内側部と脛骨内側部の関節軟骨摩耗により上述した機序で滑膜が炎症し滑液の過剰分泌が生じます。
膝蓋大腿関節の関節軟骨が摩耗する理由
大腿四頭筋の筋収縮は膝蓋骨を移動させるモーメントを発生させます。
・内側広筋の収縮は膝蓋骨を内側へ移動
・外側広筋の収縮は膝蓋骨を外側へ移動
・大腿直筋の収縮は膝蓋骨を直上へ移動
大腿直筋と外側広筋の過緊張により膝蓋骨は上外側へ偏移します。
大腿骨外側部と膝蓋骨外側部に圧が限局的に集中し、関節軟骨の摩耗が生じます。
大腿骨外側部と膝蓋骨外側部の関節軟骨摩耗により上述した機序で滑膜が炎症し滑液の過剰分泌が生じます。
溜まった膝の水を抜く方法
即時的な効果を得るのであれば医師が膝に注射し水を抜く方法が1番確実です。
過剰分泌した滑液を抜くことで減少させることが可能です。
注射で水を抜くと癖になるとよく聞きますが個人的には少し語弊があるように感じます。
実際には、根本的な膝関節の炎症症状が緩和されていないため滑液の過剰分泌が繰り返されているのだと思います。
そのため根本的に膝に溜まった水を抜くのであれば膝関節の関節包内の炎症症状を緩和・消失させ関節軟骨の摩耗進行を予防する必要があります。
軟骨片が滑膜を刺激しなければ関節包内の炎症は生じないからです。
関節包内の炎症症状を緩和・消失させるリハビリは環境調整や運動量・食事量の調整等、多岐にわたります。
関節包内外の炎症症状を緩和・消失させるリハビリはこちらです。 お時間があったら閲覧ください。
まとめ
膝に溜まった水(滑液)を体外へ放出する方法として注射で抜くのは効果的といえます。
しかし関節軟骨の摩耗に伴う炎症症状を改善させない限り、水(滑液)を抜いてもすぐにまた溜まることは明白です。