HDS-Rの目的と項目の解釈,認知症疑い判定の点数とは?

HDS-Rは臨床上よく用いられる認知症の評価指標です。

HDS-Rを解釈する上で、総合得点以外に各項目得点を中核症状と統合する必要があります。

今回は、HDS-Rの目的と各項目の果の解釈、認知症疑いのカットオフ値の判定基準に関して記載します。

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HDS-Rの目的とは?

HDS-R(改定長谷川式簡易知能評価スケール)の目的は認知症の中核症状を評価し簡易的に認知症疑いを判定することです。

認知症の症状は以下の2つに大きく分類されます。

・中核症状

・行動、心理症状(BPSD)

中核症状は脳細胞の死滅によって生じる症状です。

見当識障害や記憶障害は中核症状の根幹を形成します。

上述したような中核症状の評価指標がHDS-Rです。

一方でBPSDの評価はHDS-Rでは実施できません。

BPSDはDBDスケールやNPI-NHが評価指標となります。

BPSDの概要や評価方法、対応、リハビリ治療の詳細はこちらです。お時間があったら閲覧ください。

HDS-Rの各項目結果を解釈するには、まず中核症状を理解する必要があります。

そのためまず中核症状に関して説明し、その後HDS-R各項目結果の解釈を記載します。

中核症状の具体的症状

中核症状は大きく以下の4つに分類されます。

・見当識障害(時間、場所、人)

・記憶障害(即時記憶、長期記憶、視覚・聴覚記憶の保持、ワーキングメモリ)

・理解、判断力、実行機能障害

・失語、失認、失行

見当識障害とは?

見当識は自身が今おかれている状況を判断する能力です。

見当識は大きく分けて以下の3項目に分類されます。

時間の見当識

日付や曜日、季節などの時間に関する見当識です。

障害により「約束日が守れない」、「遅刻」などの症状が出現します。

場所の見当識

今いる場所や記憶している場所に関する見当識です。

障害により「家の導線が把握できない」などの症状が出現します。

人の見当識

初めて会った人や家族、友人に関する見当識です。

障害により「友人を会ったことのない人と認識する」などの症状が出現します。

記憶障害とは?

記憶障害とは記憶を想起する能力の障害です。

記憶は大きく分けて以下の2項目に分類されます。

・短期記憶

・長期記憶

短期記憶

約15秒~60秒間保持可能な記憶です。

情報を忘れないように意識して一時記憶する場合、頭の中のメモ帳であるワーキングメモリが作用します。

短期記憶障害では記憶保持時間が減少し、ワーキングメモリの不足による情報の統合が困難となります。

その結果、新しい物事・情報を短期記憶として保持・統合できなくなります。

長期記憶

長期記憶は以下の4つの記憶に大別されます。

①近時記憶(数分~数日の間の記憶)

②遠隔記憶(近時記憶~数十年の記憶)

③手続き記憶(身体に染み付いた習慣的記憶、車の運転や留学による日々の英会話など)

④宣言的記憶(エピソード記憶と意味記憶)

・エピソード記憶(個人が経験した体験や感情を伴った出来事に関する記憶、思い出の風景など)

エピソード記憶が障害されると体験や出来事自体を忘れてしまう現象が生じます。

・意味記憶(意味記憶とは言葉や物などの意味に関する記憶)

意味記憶が障害されると言葉や物の意味を語源化することが困難となり「あれ」や「それ」で意味記憶を代用します。

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理解、判断力、実行機能障害とは?

脳細胞の壊死により論理的思考過程に基づく行動が実施困難となります。

具体的に課題を遂行する際には以下の簡略化されたプロセスを踏みます

・課題を理解する

・課題の対応策を判断する

・対応策を実行する

中核症状ではこのすべてのプロセスが障害されます。

失語、失認、失行とは?

中核症状では失語、失認、失行が生じます。

・失語→構音器官に問題がないにも関わらず言語障害が生じる事象

・失認→感覚器に問題がないにも関わらず感覚を介して対象物を認知できない事象

・失行→運動器に問題がないにも関わらず一連の動作を遂行できない事象

情報過多となるため、今回は中核症状に関してかなり簡略化して記載しました。

中核症状に関する詳細な内容とリハビリ治療、薬物治療に関する記事はこちらです。お時間があったら閲覧ください。

HDS-Rの各項目結果に対する解釈

HDS-Rの質問方式は言語です。

対象者と質問者の会話により正答、誤答が成り立ちます。

簡単に思える会話は以下のように複雑に構成されています。

・相手の言語を理解する

・話の内容を判断する

・返答するには言語の意味を理解する知識が必要

・返答する文章を考える

・返答言語を語想起する

つまりHDS-Rの全ての質問において語想起や意味記憶、言語理解、言語判断などの機能が関与していることは念頭におくべきポイントです。

そのことを踏まえた上でHDS-Rの各項目がどの具体的な中核症を評価しているか以下に記載します。

「1問目:年齢」→自己見当識と遠隔記憶の評価

「2問目:日付」→日付見当識の評価

「3問目:場所」→場所見当識の評価

「4問目:3つの言葉を言う、覚える」→短期記憶と短期記憶保持時間の評価

「5問目:計算」→短期記憶保持時間とワーキングメモリの評価

「6問目:逆唱」→二重課題下での短期記憶保持時間の評価

「7問目:遅延再生」→聴覚からの短期記憶保持時間の評価、近時記憶の評価となる可能性あり。

「8問目:5つの物品の記憶」→視覚からの短期記憶保持記憶の評価、近時記憶の評価となる可能性あり。

「9問目:野菜を言う」→語想起と語想起のスピード評価

このようにHDS-Rは見当識、記憶に焦点をあてた評価方法といえます。

HDS-Rのカットオフ値、判定基準の点数に関して

HDS-Rは9項目の質問項目からなります。

各項目の取得点数を加算した総点数が評価点数です。

HDS-Rは30点満点で構成されています。

このうち20点以下が認知症疑いありとなります。

健常者では、ほぼ20点以下になることはありません。

まとめ

HDS-Rの目的と各項目の結果の解釈、認知症疑いのカットオフ値の判定基準に関して記載しました。

HDS-Rは参考値としかならない場合もありますが、中核症状を客観視できる評価バッテリーはまだまだ少ない現状があります。

HDS-Rを用いた定期評価を行うことで不十分ながら中核症状を可視化でき、結果・考察の一指標として用いることが可能となります。

認知症の理解が深まる一冊

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