咳嗽反射のメカニズムとは?低下の原因とリハビリ7種紹介

人間は咳嗽反射により唾液や飲食物の気管流入を予防しています。

今回は咳嗽反射のメカニズムと咳嗽力が低下する原因、咳嗽力を強化するリハビリ方法を記載します。

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咳嗽反射とは?

咳嗽反射は一般的にむせ込みと呼ばれる反射です。

具体的には、喉頭侵入した唾液や飲食物を喀出する防衛反射のことをさします。

その作用から特に顕性誤嚥による誤嚥性肺炎予防の主軸となる反射です。

顕性誤嚥は口腔内の飲食物・唾液を嚥下した際に嚥下反射の咽頭期における気道防御機構が何らかの要因で破綻した結果生じます。

具体的には、飲食物・唾液が喉頭侵入し声門下~肺まで流入します。

気道防御機構とは飲食物・唾液を嚥下した際に嚥下反射の咽頭期で飲食物・唾液の喉頭侵入を予防する以下の事象です。

・喉頭蓋による気道閉鎖

・喉頭の前上方への挙上

・仮声帯、声門閉鎖

何らかの要因で気道防御機構が破綻し、飲食物・唾液が喉頭侵入する刺激を延髄が感知すると咳嗽反射が生じて喉頭から飲食物・唾液を喀出します。

不顕性誤嚥や嘔吐による誤嚥の機序やリハビリ方法の詳細はこちらです。お時間があったら閲覧ください。

咳嗽反射が誘発されるメカニズム

咳嗽反射を発生させるメカニズムには求心性繊維と遠心性繊維が深く関与します。

咳嗽反射が生じるメカニズムを時系列に記載します。

①気道粘膜上の咳受容器が刺激を感知

②感知した情報は求心性繊維である迷走神経を上行

③延髄に到達

④延髄から遠心性繊維である横隔神経、肋間神経に神経伝達

⑤声門閉鎖、強制呼気により咳嗽反射が出現

上述した気道防御機構は健常者でも一過性に破綻することがあります。

言い方を変えると健常者でも「ムセこみ」は生じます。

しかし健常者は咳嗽反射のメカニズムが機能しており、咳嗽力も担保されています。

そのため、唾液や飲食物を咳嗽反射で喉頭外に喀出することで顕性誤嚥による誤嚥性肺炎が生じません。

話は少し脱線しますが、睡眠時に咳嗽で目が覚めることの少ない理由の1つに、睡眠時では脳幹部が抑制されることが挙げられます。

脳幹部が抑制されると、咳受容器が刺激を感知して咳嗽を生じさせるまでの閾値が上昇します。

その結果、覚醒時では咳嗽反射が生じる唾液量でも睡眠時では咳嗽反射が遅延・消失し喉頭侵入が生じます。

健常者の嚥下機能は正常なため誤嚥量はごく少量で大部分が声門上までの喉頭侵入に留まっています。

健常者が入眠から覚めると咳嗽が生じ、痰や咳として口腔外へ喀出されるため誤嚥性肺炎には至りません。

更に話は脱線しますが、健常者の唾液喉頭侵入するリスクが高い時間帯は睡眠時です。

不顕性誤嚥は健常成人でも睡眠中50%前後生じています。

理由は睡眠時無呼吸症候群の呼吸パターンにあります。正常の呼吸パターンでは、入眠時における嚥下直後の呼吸は呼気で再開します。

先行研究では、睡眠時無呼吸症候群の入眠時では無呼吸の後に嚥下が生じ、嚥下直後の呼吸は吸気で再開するパターンが多かったことが報告されています。

唾液嚥下直後に吸気から再開すると喉頭蓋谷から下降した唾液は気管に吸引され喉頭侵入のリスクは上昇します。

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咳嗽反射の中枢と構成する相

咳嗽反射の中枢は延髄です。

上述したように気道粘膜上の咳受容器が刺激を感知すると迷走神経を上行し延髄に到達します。

延髄から遠心性繊維である横隔神経、肋間神経に神経伝達されると以下の3つの相が協調的に機能し咳嗽反射が出現します。

①吸気相

②圧縮相

③排除相

各相で機能が異なるため以下に記載します。

吸気相

吸気相は吸気筋の収縮による深呼吸で肺気量を増大させることを目的とした相です。

咳嗽は空気を圧縮した力のため吸気相で肺気量が増大した分、強力な咳嗽が発揮できます。

圧縮相

圧縮相は吸気相に吸気した気量を気道虚脱で逃さないよう胸腔内圧と気道内圧を高め圧縮することを目的とした相です。

具体的には、声門閉鎖が生じた直後に腹直筋、肋間筋が主体に筋収縮することで胸腔内圧と気道内圧を高めます。

圧縮相では特に声門閉鎖が重要です。

声門閉鎖が不十分だと空気の逃げ道が生じ、気道虚脱による咳嗽力低下に直結することが理由です。

排除相

排除相は、声門から圧縮した空気を一気に放出することで咳嗽を生じさせる相です。

具体的には、声門解放と横隔膜弛緩が生じたタイミングで腹直筋を主体とした強制呼気筋が強く収縮し咳嗽を生じさせます。

咳嗽反射が低下する原因

咳嗽力は退行性変化に伴い低下しやすい反射の1つです。

シンプルに咳嗽反射を構成する筋肉の筋力・筋出力が低下することが主理由です。

そのため上述した咳嗽反射の構成する相に関与する筋肉の柔軟性と筋力を担保する必要があります。

咳嗽力を鍛える相分け別リハビリ方法

咳嗽力強化には相分け別に以下の事象が必要となります。

・吸気相における肺気量増大

・圧縮相における声門閉鎖力増大

・排除相における呼気筋力増大

吸気相のリハビリ

吸気相における肺気量増大のアプローチは胸郭拡張を阻害する過緊張した筋の緊張緩和が主になります。

胸郭拡張は特に肋間筋の短縮や過緊張で制限されます。

肋骨間に両指先端を滑りこませ肋骨間を軽く離開しつつ持続伸長させることで肋間筋の緊張緩和を図ります。

胸郭拡張の指標は胸郭拡張差です。

最大吸気と呼気後における胸囲の差を腋窩部、剣状突起部、第10肋骨部の3部位で測定します。

また大胸筋の過緊張や肩甲骨の外転位保持も胸郭拡張を制限する重要因子です。

ストレッチで緊張緩和を図ります。

大胸筋の過緊張を認める場合、多くは僧帽筋中部・下部繊維と大・小菱形筋の筋委縮を認め力負けしている結果、胸郭拡張が制限されます。

そのため上述した筋の筋力増強を図る必要があります。

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圧縮相のリハビリ

圧縮相における声門閉鎖力増大アプローチについて記載します。

声門は披裂軟骨の回転運動により開閉します。

披裂軟骨内転は声門閉鎖、外転は声門開口に作用します。

披裂軟骨内転は外側輪状披裂筋と披裂横筋の求心性収縮と等尺性収縮によって生じます。

リハビリアプローチでは息こらえを利用し外側輪状披裂筋と披裂横筋の筋出力及び筋力増強を複合的に図ります。

具体的には以下の方法が簡易的かつ有用です。

・プッシング→壁を5秒前後持続的に押す

・ブリング→両手を前で組み5秒前後持続的に左右外側へ引く

動作中は強い息止めを行います。バルサルバ効果による血圧上昇に留意しリスク管理しつつ行ってください。

声門閉鎖の指標には最長発生持続時間(Maximum Phonation Time:MPT)が用いられます。

MPTは最大吸気時から母音を持続発声した時間です。

先行研究では、MPT9秒以下は呼吸機能や声門閉鎖に異常がある一指標であることや、誤嚥性肺炎が生じないために必要なMPTのカットオフ値は10.3秒であることが報告されています。

排除相のリハビリ

排除相の呼気筋力増大は腹直筋の筋力増強練習を主体に実施します。

腹直筋の筋トレは走行上、上部・中部と下部を分けて実施すると効果的です。

腹直筋上部・中部の筋トレ方法はニータッチ・クランクが有効的です。

両膝を立て、両膝に触れるように体幹屈曲させ上体を起こします。

腹直筋下部を筋トレ方法はツーレッグ・スパイン・リフトが有効的です。

背臥位で両下肢を伸展挙上します。

経験上、咳嗽力低下者の問題点は排除相よりも吸気相の吸気不十分と圧縮相の気道虚脱が主であることが多いです。

そのため排除相単体の相分け練習の選択も重要ですが、吸気相・圧縮相を複合した以下のような練習方法も取り入れる必要があります。

・最大吸気からのブローイング(コップに水をいれストローで泡立つよう努力呼気する)

・最大吸気から風船を膨らませる(課題難易度が高ければまき笛を使用。もしくはまき笛を切って使用)

複合した相を絡めた練習の方が、相対的に咳嗽力の強化に繋がることは多いですし効率化が図れるため推奨します。

高頻度のブローイングによる過呼吸に留意しリスク管理して行ってください。

随意的な咳嗽力の指標には最大呼気流量(Cough peak flow:CPF)が用いられます。

CPFは随意的な咳嗽における息の強さを表す指標です。

測定するにはピークフロウメーターという専用機器を用います。

最大吸気位から随意的に最大の咳嗽を2~3回試行し最大値を最大呼気流量として選択する場合が多いです。

ピークフロウメーター測定の絶対条件として対象者が指示従命可能であることが挙げられます。

先行研究では自己喀痰には240l/min以上、誤嚥性肺炎を生じさせない為には140L/min以上のCPFが必要であることが報告されており1つの指標となります。

まとめ

咳嗽反射のメカニズムと咳嗽力が低下する原因、咳嗽力を強化するリハビリ方法を記載しました。

退行性変化に伴い咳嗽力は低下しやすいため、特に生活期のリハビリでは咳嗽力の維持・増強は大切です。

高い目標ですが介入した方が自己喀痰可能となることを目指していきましょう。

参考文献

弓野大:「誤嚥性肺炎のリスクとしての咳嗽力の臨床的意義」2016

上川紀道、他:「咳嗽の最大流量に影響を与える因子」日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌第26巻、第2号、200-203、2016

日野峻輔:「睡眠時の末梢刺激応答性の変化に関わるグリシン受容体機構の検討」埼玉医科大学雑誌 第41巻 第2号別項 平成27年3月

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