認知症の中核症状とは?対応と治療の意味を理解して覚えよう

認知症者の症状の1つとして記憶障害や見当識障害が存在します。

これらの障害は中核症状に位置づけられます。

中核症状の概要と対応、治療方法に関して記載しました。

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認知症の中核症状とは?

認知症の症状は以下の2つに大きく分類されます。

・中核症状

・行動、心理症状(周辺症状)

中核症状は脳細胞の死滅によって生じる症状です。

そのため中核症状は個人差があるものの脳画像と一致する症状が出現しやすい特徴があります。

例えば進行性であるアルツハイマー型認知症では、脳委縮により脳細胞が死滅するため比例して中核症状が出現することが多いです。

行動・心理症状(BPSD)に関する詳細と具体的なリハビリ治療はこちらです。お時間があったら閲覧ください。

中核症状の具体的症状

中核症状は大きく以下の4つに分類されます。

・見当識障害(時間、場所、人)

・記憶障害(即時記憶、長期記憶、視覚・聴覚記憶の保持、ワーキングメモリ)

・理解、判断力、実行機能障害

・失語、失認、失行

以下に各障害の詳細を記載します。

中核症状の1つである見当識障害とは?

見当識は自身が今おかれている状況を判断する能力です。

中核症状では脳細胞の壊死により見当識が障害されます。

見当識には大きく分けて以下の3項目に分類されます。

・時間

・場所

・人

時間の見当識障害

日付や曜日、季節などの時間に関する見当識が障害されます。

具体的な症状として「間違った日にゴミを出す」、「約束日が守れない」、「遅刻する」などの症状が出現します。

見当識障害の中でも時間に関する見当識は早期に障害されやすいです。

場所の見当識障害

今いる場所や記憶している場所に関する見当識が障害されます。

具体的な症状として「目的とする場所まで辿り着けない」、「家の導線が把握できない」などの症状が出現します。

BPSDの徘徊は、場所の見当識障害が影響していることが多いです。

場所の見当識が障害されると「不安による帰宅願望」や「尿意によりトイレを探す徘徊」に繋がります。

人の見当識障害

初めて会った人や家族、友人に関する見当識が障害されます。

具体的な症状として「家族を友人と間違って認識する」、「友人を会ったことのない人と認識する」などの症状が出現します。

人の見当識は症状が進行するまで保たれやすいです。

中核症状の1つである記憶障害とは?

記憶とは?

記憶は大きく分けて以下の3つに分類されます。

・感覚記憶

・短期(即時)記憶

・長期記憶→①近時記憶、②遠隔記憶、③手続き記憶、④宣言的記憶(エピソード記憶、意味記憶)

記憶のメカニズムを簡易化すると以下のようになります。

・情報をインプット

・情報を感覚記憶、短期記憶と長期記憶に仕分ける(海馬の主作用で短期記憶から長期記憶に昇華)

・長期記憶に仕分けられた情報は大脳皮質に貯蔵

・大脳皮質に貯蔵された情報を想起

一般的に用いられる「記憶」は大脳皮質に貯蔵された情報を想起する状態のことをさします。

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記憶障害とは?

記憶障害とは主に短期記憶と長期記憶を思い出す能力の障害です。

記憶障害の特徴の1つとして記憶障害の「自覚がない」ことが挙げられます。

記憶障害と物忘れは混合されやすいですが、物忘れは記憶障害と異なり「思い出せない」ことに対する「自覚」が存在します。

短期記憶障害とは?

長期記憶に仕分けられなかった情報は感覚記憶と短期記憶に分類されますが、いずれにしても記憶保持時間は非常に短いです。

感覚記憶は固有感覚で取得した情報をなんとなく保持する記憶です。

そのため視覚・聴覚共に数秒以下しか保持できない特徴をもちます。

感覚記憶を意識して保持する記憶が短期記憶です。

例えば「この言葉を忘れないように!」と忠告された場合、忘れないように意識して記憶します。

この、情報を一時記憶する頭の中のメモ帳が前頭前野にあるワーキングメモリです。

ワーキングメモリの機能により私達は情報を短期記憶下で保持しつつ他の課題を遂行することが可能となります。

しかし短期記憶に属した単発的な情報では長期記憶への昇華が困難なため、他の情報量が多くなると忘れてしまいます。

本来、短期記憶の保持時間は短く約15秒~60秒間しか記憶が保持できません。

前置きが長くなりましたが、短期記憶障害では主に以下の2項目が障害されます。

・ワーキングメモリ

・短期記憶の保持時間

その結果、感覚記憶から短期記憶へ移行する情報が減少します。

短期記憶へ移行する情報が減少した上に、ワーキングメモリの不足により情報が統合できなくなります。

結果として、新しい物事・情報を短期記憶として保持・統合できなくなる短期記憶障害が形成されます。

長期記憶障害とは?

・長期記憶は以下の4つの記憶に大別されます。

①近時記憶

②遠隔記憶

③手続き記憶

④宣言的記憶(エピソード記憶、意味記憶)

近時記憶障害とは?

近時記憶は即時記憶よりも保持時間が長い記憶です。

この記憶の障害を近時記憶障害といいます。

近時記憶は定義が曖昧で、記憶保持の明確な期間が定まっていません(数分~数日の間が近時記憶)

臨床上では前日の食事内容などを尋ね近時記憶が保たれているかスクリーニングします。

しかし健常者でも記憶してから1日後には74%の事象を忘れてしまうため前日の食事内容が答えられなくても近時記憶障害と断定はできません。

あくまで考察を述べる上での1つの指標ぐらいに考えておくのが望ましいと思います。

遠隔記憶障害とは?

遠隔記憶とは近時記憶よりも保持時間が長い記憶です。

この記憶の障害を遠隔記憶障害といいます。

遠隔記憶も定義が曖昧で、記憶保持の明確な期間が定まっていません(近時記憶~数十年)

臨床上では過去の旅行など、個人史を中心に尋ね遠隔記憶が保たれているかスクリーニングします。

記憶が固定化された遠隔記憶は記憶障害が進行しても忘れにくい特徴があります。

手続き記憶障害とは?

手続き記憶は身体に染み付いた習慣的記憶です。

手続き記憶は、車の運転や留学による日々の英会話が当てはまります。

忘れる前に練習することで記憶が固定化され手続き記憶は長期記憶となります。

車の運転を長年行わなくても身体が覚えているように、手続き記憶は長期記憶の中でも記憶の確立が強固です。

そのため手続き記憶は記憶障害が進行しても忘れにくい特徴があります。

宣言的記憶障害とは?

宣言的記憶は以下の2つの記憶に大別されます。

・エピソード記憶

・意味記憶

各記憶の障害を以下に述べます。

エピソード記憶障害とは?

エピソード記憶とは個人が経験した体験(エピソード)や感情を伴った出来事に関する記憶です。

具体例を挙げると、思い出の風景や品、学業や職業での思い出が感情を伴って思い出す記憶などがあてはまります。

エピソード記憶が障害されると体験や出来事自体を忘れてしまう現象が生じます。

意味記憶とは?

意味記憶とは言葉や物などの意味に関する記憶です。

意味記憶が障害されると言葉や物の意味を語源化することが困難となり「あれ」や「それ」で意味記憶を代用します。

中核症状である理解、判断力、実行機能障害とは?

脳細胞の壊死により論理的思考過程に基づく行動が実施困難となります。

具体的に課題を遂行する際には以下の簡略化されたプロセスを踏みます

・課題を理解する

・課題の対応策を判断する

・対応策を実行する

中核症状ではこのすべてのプロセスが障害されます。

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中核症状である失語、失認、失行とは?

中核症状では失語、失認、失行が生じます。

以下に内容を記載します。

失語とは?

言語を理解し操作する機能が言語機能です。

構音器官に問題がないにも関わらず言語障害が生じる事象を失語といいます。

簡単に思える会話は以下のように複雑に構成されています。

・相手の言語を理解する

・話の内容を判断する

・返答するには言語の意味を理解する知識が必要

・返答する文章を考える

・返答言語を語想起する

このように認知症の失語には意味記憶障害や理解、判断力、実行機能障害など他の中核症状が深く関与するケースが多いです。

失認とは?

感覚器に問題がないにも関わらず感覚を介して対象物を認知できない事象を失認といいます。

例えば「隣人のAさんが犬の散歩がてら昔話をしにきた」と仮定します。

この過程の構成は簡素化すると以下の通りです。

・隣人はAさん

・犬はAさんが飼っている

・Aさんは対象者に向けて話かけている

失認では視覚や聴覚に問題がないのに例えば以下のように誤った認識をしてしまいます。

・知らない人(Aさん)が来た

・犬に鎖をつけていじめている

・知らない人(Aさん)が私の経験したことのない話をしてくる

認知症の失認には見当識障害や記憶障害など、他の中核症状が深く関与するケースが多いです。

失行とは?

運動器に問題がないにも関わらず一連の動作を遂行できない事象を失行といいます。

失語や失認同様、失行も見当識障害や記憶障害など、他の中核症状が深く関与するケースが多いです。

中核症状の対応

中核症状の対応は障害された項目や重症度による個別性の要因が大きく一概にこの対応が望ましいとは言えません。

ただ、認知症者への即時的な対応・情報伝達は可能な限り簡略化し要点のみ伝える方法が望ましいと思います。

認知症者は中核症状の記憶障害や見当識障害を基盤として自身がおかれている状況下が分からず常に不安な状態であると推察されます。

勇気を出して知らない人に話かけたのに、返答が複雑で理解ができなかったら不安感は増大します。

不安感の増大は他のBPSDの出現や悪化に繋がります。

そのため即時的な対応であれば不安を軽減する対応が望ましいと考えます。

中核症状の薬物治療とリハビリ治療

アルツハイマー型認知症の中核症状の治療は薬物療法とリハビリ治療を複合して行われることが多いです。

中核症状が軽度であった場合は非薬物療法としてリハビリ治療を主軸に行う場合もあります。

中核症状に対する薬物療法

中核症状に対する代表的な薬物は以下の4つです。

・アリセプト

・レミニール(弱興奮系)

・パッチ製剤(弱興奮系)

・メマリー(覚醒系)

アリセプトとは?

アリセプトはアセチルコリンの分解を抑制し、脳内のアセチルコリン量を担保することで中核症状の進行を遅らせる作用があります。

レミニールとは?

アリセプトと同様にアセチルコリンの分解を抑制し、脳内のアセチルコリン量を担保することで中核症状の進行を遅らせる作用があります。

アリセプトと異なる点としてレミニールはアセチルコリン受容体と結合し神経伝達物質を活性化することで認知症による失語の改善が期待できます。

パッチ製剤とは?

パッチ製剤は名前の通り、飲み薬ではなく貼り薬(パッチ)です。

パッチ製剤にはイクセロンパッチやリバスタッチパッチがあります。

パッチ製剤は、アセチルコリンエステラーゼの作用を抑制し、脳内のアセチルコリン量を担保することで中核症状の進行を遅らせる作用があります。

メマリーとは?

メマリーは脳神神経細胞を破壊するグルタミン酸濃度の上昇を抑制することで脳神経細胞を保護し中核症状の進行を遅らせる作用があります。

中等度~重度の記憶障害や判断力低下などの症状に対し特に効果的です。

中核症状に対するリハビリ治療

中核症状に対するリハビリ治療は以下の3つのリハビリに大別されます。

・見当識障害に対するリハビリ

・短期記憶(ワーキングメモリ)障害に対するリハビリ

・長期記憶(エピソード記憶)障害に対するリハビリ

見当識障害に対するリハビリ

見当識の維持で用いられるリハビリ治療の1つに「現実見当識訓練(RO)」があります。

ROの基本的な考え方と目的は、以下のような基本的情報を繰り返し与えることで時間・場所・人の見当識の維持を図ることです。

・氏名(人の見当識維持目的)

・場所(場所の見当識維持目的)

・曜日(時間の見当識維持目的)

・時間(時間の見当識維持目的)

など

現実見当識訓練には以下の2つのタイプがあります。

・集団で行う教室RO

・個別に行う24時間RO

現実見当識訓練において特に重要な点は時間と関連付けた情報(手がかり)を頻回に与えることです。

例えば、「〇〇さんおはよう」、「もうすぐ朝の7時です。朝ごはんを食べましょう」などです。

見当識障害の中でも時間に関する見当識は早期に障害されやすいため場所に関する見当識障害の進行予防は重要視されます。

短期記憶(ワーキングメモリ)障害に対するリハビリ

短期記憶(ワーキングメモリー)の維持で用いられるリハビリ治療の1つが「イメージング」です。

イメージングとは頭の中の表像を形成することです。

イメージングの方法は評価者が対象者に対し以下の内容を伝達します。

①覚える単語をイメージする。

②イメージした事象を絵に書く。

非常にシンプルですが、この方法で頭の中の表像を形成化します。

イメージングに慣れてきたら課題難易度を上げ、ワーキングメモリの情報処理能力の維持を図ります。

一例として、以下のような方法があります。

①シチューの材料を3つイメージする。

②イメージした3つの材料を絵に書く。

このような情報処理が可能となると日常生活上で処理できる問題が増え、生活場面におとしこんだリハビリが展開できます。

長期記憶(エピソード記憶)障害に対するリハビリ

長期記憶(エピソード記憶)の維持で用いられるリハビリ治療の1つが「回想法」です。

回想法は、大脳皮質に貯蔵された情報を想起する手がかりを提示することで思い出を認知症者に語っていただく手法です。

例えば、過去に経験した旅行写真を見ていただき、語っていただく方法などが挙げられます。

音楽療法も一部は回想法に近似しており、聴覚からの手がかりを提示することで思い出を認知症者に語っていただくことが可能です。

エピソード記憶が障害されると体験や出来事自体を忘れてしまう現象が生じます。

エピソード記憶に関わらず基本的に記憶障害へのアプローチは忘却現象を反復した情報想起で予防することにあります。

まとめ

中核症状の概要と対応、治療方法に関して記載しました。

特に中核症状の根幹を形成する見当識障害と記憶障害は早期からアプローチし進行予防に努める必要があります。

私も含め理学療法士は認知症の中核症状そのものに対するアプローチを敬遠しがちに感じます。

しかし中核症状の進行予防は在宅生活の維持や介助負担感の軽減に大きく貢献できますので積極的に取り組んで頂ければ幸いです。

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