小脳出血と小脳梗塞のリハビリ治療と症状,後遺症の予後

小脳出血や小脳梗塞の器質的病変が生じると小脳は機能不全に陥ります。

小脳出血と小脳梗塞は、発生時に出現する症状と後遺症を分けて考える必要があります。

小脳出血と小脳梗塞発生時の症状に対しては手術・内科的治療・保存療法を選択します。

後遺症に対してはリハビリ治療を展開します。

今回は小脳出血と小脳梗塞で生じる症状と後遺症の予後、リハビリ治療や手術方法、麻痺の出現有無を中心に記載します。

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小脳出血の症状と生命予後

小脳出血は全脳出血の約5%~10%の割合を占めます。

小脳出血は高血圧が原因で生じる割合が高い疾患です。

そのため日中の活動時間帯において血圧が高値を示す際に小脳出血を呈することが多いです。

小脳出血では初期症状として以下のような症状が出現します。

・後頭部痛

・反復する嘔吐

・回転性めまい

出血量や血種が大きい場合は第4脳室を圧迫し脳ヘルニアによる意識障害を呈することもあります。

また小脳は脳幹と上・中・下小脳脚の3つの繊維束で連結しています。

そのため、出血量多く血種が大きいと脳圧上昇により延髄の呼吸中枢との連結が阻害され生存率が低下する可能性が高まります。

小脳出血の血種量は30ml以上で生命予後が不良となることが示唆されています。

小脳出血の手術方法

小脳出血を手術するか否かの判断基準は血種の大きさです。

小脳出血は血種量が多いと生命に関わる疾患であり、生命予後の回復には肥大化した血種の除去や吸引が必須です。

具体的には血種の大きさが3cm以上の場合が手術適応となります。

手術には以下のような方式があり生命予後の回復(脳圧亢進の是正や血種の肥大化予防)目的で施行されます。

・開頭血種除去術

・血種吸引術

血種の大きさが3cm未満の場合は保存療法や内科的治療が選択されます。

小脳の再出血予防目的で血圧コントロールを主体に行います。

小脳梗塞の症状と生命予後

小脳梗塞は全脳梗塞の約1%~5%の割合を占めます。

小脳梗塞は動脈硬化や高血圧が原因で生じる割合が高い疾患です。

小脳梗塞が生じる一機序に動脈硬化や血栓が飛ぶことによる椎骨動脈閉塞があります。

梗塞範囲が広大な小脳梗塞では脳圧上昇により脳ヘルニアによる意識障害や延髄の呼吸中枢との連結が阻害されることがあります。

小脳梗塞でも初期症状として小脳出血と同様の症状が出現します。

・後頭部痛

・反復する嘔吐

・回転性めまい

小脳梗塞の生命予後は小脳出血と比較すると良いとされています。

そのため小脳梗塞では後遺症を遷延させない視点が重要です。

小脳梗塞の手術方法

一般的に小脳梗塞では内科的治療が選択されます。

具体的には以下の4つの治療法が選択され、再梗塞を予防します。

①血栓溶解療法→血栓の溶解

②脳保護療法→脳細胞を酸化的障害から保護

③抗脳浮腫療法→脳細胞の浮腫を抑制

④抗血栓療法→血栓を予防

脳出血と脳梗塞の手術や保存療法、内科的治療は主に生命維持や再出血・梗塞予防目的で施行されます。

そのため運動失調症状を主体とした後遺症は予防できません。

後遺症はリハビリを展開することで回復・改善を図ります。

小脳出血、小脳梗塞の後遺症とリハビリを理解するには小脳の機能を把握する必要があります

そのためまず小脳の機能から説明していきます。

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小脳の機能

小脳には大きく以下の4つの機能があります。

・四肢の運動調節

・体幹の運動調節

・平衡の調節

・眼球運動の調節

これらの機能は小脳における以下の3つの機能的区分の入力と出力の作用によって統制されています。

・大脳小脳

・脊髄小脳

・前庭小脳

3つの機能区分の入力と出力の作用について以下に述べます。

大脳小脳の作用

大脳皮質から運動の情報が入力されます。

入力情報を統合し、運動の調節に関する情報を大脳皮質へ出力します。

四肢の運動を調節する作用があります。

脊髄小脳の作用

筋紡錘・腱紡錘から脊髄小脳路を通じ筋張力が入力されます。

脳幹を経由し脊髄へ出力します。

体幹の動きを調節する作用があります。

前庭小脳の作用

内耳の前庭器から頭部の位置・傾き情報が入力されます。

脊髄と眼球運動の核へ出力します。

身体の平衡と眼球運動を調節する作用があります。

小脳出血と小脳梗塞で後遺症が生じる理由

小脳出血と小脳梗塞の代表的な後遺症が小脳性運動失調です。

運動失調症状は「感覚入力障害や運動出力調節障害により生じる平衡障害、筋収縮コントロール障害」です。

運動失調症状について説明します。

筋収縮力の決定は最終的にα運動繊維の発火状態に依存します。

人間は以下のプロセスを踏むことでα運動繊維の発火(筋収縮)をコントロールしています。

視覚や深部覚などの感覚刺激を身体抹消より入力し上行

入力情報は小脳や視床を介し大脳皮質で統合

統合情報を基に筋収縮調節する運動情報を出力

④出力情報は錐体路、錐体外路を下降しα運動繊維の興奮度を決定

つまり感覚入力や統合機能、運動出力が単一もしくは複数障害されるとα繊維の発火(筋収縮)が調節不能となります。

その場合、目的動作遂行に比例しない筋収縮過多、筋収縮減少が生じます。

この現象が運動失調症状です。

小脳出血と小脳梗塞では上述した小脳の3つの機能区分が損傷します。

その結果、以下の障害が生じます。

・小脳への感覚入力障害

・小脳からの運動出力障害

・小脳の統合機能不能

感覚入力や統合機能、運動出力が障害された結果、後遺症である小脳性運動失調が出現します。

小脳の入力障害、出力障害、統合機能不能の詳細を以下に記載します。

小脳への感覚入力障害

・前庭小脳の損傷による内耳からの平衡感覚に関する入力障害

・脊髄小脳の損傷による筋紡錘・腱紡錘からの筋張力に関する感覚入力障害

小脳からの運動出力障害

・前庭小脳の損傷による眼球運動系への運動出力障害。

・脊髄小脳の損傷による体幹への運動出力障害。

・大脳小脳の損傷による四肢への運動出力障害。

小脳の統合機能不能

・大脳小脳の損傷による運動入力情報の統合障害

小脳出血と小脳梗塞の後遺症と機能予後 

上述した理由で小脳の入力・出力障害、統合機能不能が生じると後遺症である小脳性運動失調が出現します。

小脳性運動失調では以下のような症状が出現します。

①複視・眼振

→前庭小脳の損傷による眼球運動系への運動出力障害が一要因。

②体幹失調(動揺)

→脊髄小脳の損傷による体幹への運動出力障害が一要因。

③四肢の測定異常・反復拮抗運動不能・運動分解

→大脳小脳の損傷による四肢への運動出力障害が一要因。

④筋緊張低下

→大脳小脳の損傷による運動入力情報の統合障害が一要因。

⑤構音障害

→大脳小脳の損傷による大脳皮質への運動出力障害が一要因。

小脳出血と小脳梗塞は非進行性疾患です。

そのため後遺症である小脳性運動失調はリハビリでの改善・回復が期待できます。

血種や症状の重症度により一概には言えませんが、運動失調の機能予後は比較的良好とされます。

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小脳出血と小脳梗塞のリハビリ治療

小脳出血と小脳梗塞のリハビリ治療の主軸は小脳性運動失調の改善・回復です。

1度原点回帰しますが、運動失調症状の具体的な解釈は

「感覚入力障害や運動出力調節障害により生じる平衡障害、筋収縮コントロール障害」です。

小脳性運動失調では感覚入力障害と運動出力障害に加え小脳の統合機能不能が生じます。

そのため小脳性運動失調のリハビリ治療では以下の内容が求められます。

・筋の固有受容器を刺激による感覚入力量の増大

・小脳の感覚入力情報の統合機能を再学習

・神経筋の反応を促通して運動出力を調節

求められた内容が行える具体的なリハビリ治療方法がPNFです。

PNFは別名、固有受容性神経筋促通法と呼ばれています。

名前通りですが、PNFとは筋の固有受容器を刺激して神経筋の反応を促通する方法です。

PNF治療の基本は以下の手法で構成されます。

①3次元の随意運動にてセラピストが徒手抵抗を加え固有受容器刺激し感覚入力量を増大

②徒手抵抗にて神経筋の反応を最適化させ運動出力を発揮

③反復運動による運動学習

まず、①の感覚入力量増大の手法を説明します。

そのためには最初に3次元の運動であるPNFパターンについて理解する必要があります。

PNFパターンで感覚入力量を増大する方法

PNFパターンは対角線上に動く屈曲-伸展、内転-外転、内旋-外旋が組み合わさった3次元の随意運動をさします。

屈曲-伸展、内転-外転、内旋-外旋による三次元の運動は、解剖学的構造とも一致しており固有受容器をより刺激できます。

固有受容器には深部感覚や筋紡錘・腱紡錘からの筋張力情報も含まれます。

ここからは具体例を交えPNFパターンで感覚入力量を増大する方法を説明します。

具体例)

小脳出血で大腿四頭筋の筋収縮力が減弱。歩行のLRで膝折れが生じる。

固有受容器である筋張力に関する感覚情報は大腿四頭筋から入力されます。

入力された情報は脊髄小脳路を通じ上行しますが、小脳出血や小脳梗塞で小脳が損傷されると入力情報も遮断されます。

その結果、筋紡錘・腱紡錘からの筋張力の感覚入力が減弱します。

PNFでは対角線上に動く屈曲-伸展、内転-外転、内旋-外旋が組み合わさった三次元の随意運動で固有受容器を促通します

具体的には三次元の随意運動により、大腿四頭筋は遠心性収縮、求心性収縮、等尺性収縮で異なる筋張力を発揮します。

筋張力の発揮は大腿四頭筋からの感覚入力量を増大させます。

増大された感覚入力情報は脊髄小脳路を通じて上行し小脳を賦活化させます。

その作用により小脳性運動失調の感覚入力障害の是正を図ることができます。

次に上述②の徒手抵抗にて神経筋の反応を最適化させ運動出力を発揮させる手法に関して説明します。

PNFパターンで運動出力を最適化する方法

PNFの対角線上に動く屈曲-伸展、内転-外転、内旋-外旋が組み合わさった三次元の随意運動はセラピストの徒手抵抗下で行います。

理由として、PNFの運動出力最適化の理論は以下の2つの原理を基盤としているためです。

・特異性の原理→白筋繊維と赤筋繊維は各々で適した負荷を選択する必要があるという原理

・過負荷の原理→筋出力や筋肥大を行うには筋肉に過度な負荷を与える必要があるという原理

上述した具体例で改善すべき問題点は大腿四頭筋の筋収縮力減弱です。

それも歩行のLRという瞬間的な時間で大腿四頭筋の筋収縮を発揮する必要があります。

瞬発的な筋収縮発揮には白筋繊維を選択的に鍛える必要があります(特異性の原理)。

また白筋繊維を鍛える方法としては高負荷低頻度やスロートレーニングを選択する必要があります(過負荷の原理)。

具体例では以下のようなPNFの手法で運動出力を最適化させます。

①療法士の抵抗に逆らいながら大腿四頭筋を求心性収縮させ膝関節完全伸展直前まで膝伸展させる。

(下肢屈曲・外転・外旋から下肢伸展・内転・内旋への随意抵抗運動)

②膝関節完全伸展直前(大腿四頭筋の筋収縮を途切れさせない)から療法士の抵抗を大腿四頭筋の遠心性収縮に切り替える。

③療法士の抵抗に逆らいながら大腿四頭筋を遠心性収縮させ膝関節屈曲する。

(下肢伸展・内転・内旋から下肢屈曲・外転・外旋への随意抵抗運動)

上記の①~③をゆっくりとした速さで3~10往復行い促通したい運動パターンで終了します(スロー・リバーサル)。

具体例の場合は下肢伸展・内転・内旋への随意抵抗運動で終了します。

理由としては歩行のICからLRへの移行では膝関節は屈曲5度から15度に変化するためです。

そのため特に膝関節膝屈曲5度から膝屈曲15度前後までの角度で大腿四頭筋の遠心性収縮が発揮できることを意識し運動を促通する必要があります。

このように特異性の原理と、過負荷の原理を基盤としたPNFを展開します。

その結果、歩行のIC~LRへの切り替えにて大腿四頭筋が瞬発的にも筋収縮を発揮できるよう治療します。

最後にPNFの反復運動により運動学習を促通する手法を説明します。

PNFパターンの反復による運動学習

PNFは特異性の原理と、過負荷の原理の他に可逆性の原理も基盤としています。

可逆性の原理とは、リハビリ治療にて成果が得られてもリハビリ治療を止めると成果が失われていくという原理です。

リハビリの即時効果があるが翌日への持ち越し効果が得られない事象が可逆性の原理です。

そのためPNFでは感覚入力増強させつつ運動出力をコントロールした運動を反復させることで運動学習を促通します。

運動学習により単一の成果から持続的な成果に昇華させることでリハビリ治療の効果を確固たるものとします

PNF以外の小脳性運動失調を改善するリハビリとしては重錘バンドや弾性緊迫帯の使用が挙げられます。

重錘バンドや弾性緊迫帯を使用することで一時的に感覚入力量は増大し運動出力のコントロールは図れる可能性はあります。

しかし実生活では重錘や弾性緊迫帯を巻いて生活しません。

そのため重錘バンドや弾性緊迫帯を使用した治療は学習しても日常生活に反映されないという致命的な欠点があります。

結果として、リハビリの即時効果は得られるが、翌日への持ち越し効果が得られないということが大半だと思います。

故にわたしは運動失調に対してはPNFを用いたリハビリ治療を推奨します。

リハビリ治療で活かせる3つのPNFテクニックの詳細はこちらです。お時間があったら閲覧ください。

PNF治療を1日でも早く臨床で活かすためには以下のようなDVD付の書籍にて動画を閲覧しつつ学ぶ方法が時間帯効果で最適だと思います。

小脳出血と小脳梗塞では痙性麻痺は出現しない

小脳性出血と小脳性梗塞では大脳小脳の損傷が生じます。

大脳小脳の損傷で錐体路が障害された結果、小脳性出血と小脳性梗塞では筋緊張が低下し弛緩性麻痺を呈します。

痙性麻痺は内包の損傷により錐体外路を抑制する皮質核路の障害が主理由で生じます。

具体的には錐体外路の抑制が外れたことによりα運動繊維を抑制するⅡ群繊維の機能が破綻し筋緊張が亢進します。

持続した筋緊張亢進は痙性麻痺を形成します。

上述の機序により純粋な小脳出血と小脳梗塞では痙性麻痺が出現しません。

筋緊張亢進のメカニズムとリハビリ治療の詳細とおススメ書籍がこちらです。

まとめ

小脳出血と小脳梗塞で生じる症状と後遺症の予後、リハビリ治療や手術方法、麻痺の出現有無を記載しました。

小脳出血と小脳梗塞では生命予後と機能予後を分けて考える必要があります。

後遺症である小脳性運動失調のリハビリ治療は経験上PNFを用いたアプローチが1番効果的です。

PNFはテクニック要素が強いイメージが根強いですが実際は理にかなった治療方法であり運動失調に対するアプローチでは重宝します。

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