変形性膝関節症は変形性疾患の第1位であり、臨床上アプローチする機会も多い疾患です。
日本では、変形性膝関節症のうちO脚が90%以上を占め割合が非常に多い反面X脚を呈する割合は少ないです。
今回は変形性膝関節症でなぜO脚が形成されやすくX脚は形成されにくいのかの理由を中心に記載します。
変形性膝関節症で生じるO脚とX脚の判定方法
O脚とX脚は膝の変形角度大腿脛骨角(FTA)で判定されます。
大腿脛骨角(FTA)の正常値は170度~176度です。
・FTA180度以上がO脚
・FTA165度以下がX脚
O脚の変形性膝関節症が多い原因は?
正常な膝関節は大腿脛骨関節間で圧分散が図れ、関節軟骨の肥厚が保たれています。
また関節軟骨に栄養を与える滑液が滞りなく循環しています 。
変形性膝関節症の進行は、膝関節周囲筋の筋委縮・過緊張により大腿脛骨関節の圧分散が十分に図れないことが原因です。
そしてO脚は、大腿骨内側部と脛骨内側部に圧が限局的に集中し関節軟骨の摩耗、関節腔の狭小化が生じることで形成されます。
大腿骨内側部と脛骨内側部に圧が限局的に集中する1つの理由として外側広筋の過緊張に伴う股関節が外旋位に保持が挙げられます。
大腿脛骨関節は構造上、骨性支持のみでは関節の脱臼を予防できません。
そのため、大腿四頭筋を中心とする筋肉と前・後十字靭帯、内外側側副靭帯を中心とする靭帯で脱臼予防しています。
靭帯の補強力は退行性変化に伴い低下します。脱臼のリスクを回避するため膝周囲筋を過緊張させて脱臼を予防する戦略をとります。
膝周囲筋は均一に過緊張するわけではありません。
過緊張しやすい筋肉は白筋繊維保有量が多く、過緊張しにくい筋肉(筋委縮しやすい筋肉)は赤筋繊維保有量が多いです。
大腿四頭筋で考えると、白筋繊維が豊富な大腿直筋と外側広筋が過緊張となる反面、赤筋繊維が豊富な内側広筋は筋委縮が生じやすい特性があります。
内側広筋の萎縮と外側広筋の過緊張は股関節を外旋させます。
その姿勢が持続すると股関節外旋筋が短縮し過緊張が生じます。
外旋筋である縫工筋と中・小殿筋は股関節外転作用があり過緊張により股関節外転位を呈します。
外旋筋である鷲足(縫工筋・薄筋)は膝関節屈曲作用があり過緊張で膝屈曲位を呈します。
股関節の外旋・外転位の保持により大腿骨内側部と脛骨内側部に圧が集中します。
その結果、大腿骨内側部と脛骨内側部の関節軟骨が摩耗しO脚が形成されます。
X脚の形性膝関節症が少ない原因は?
X脚はO脚と真逆の機序で生じます。
具体的には、大腿骨外側部と脛骨外側部に圧が限局的に集中し関節軟骨の摩耗、関節腔の狭小化によりX脚が形成されます。
膝関節を外反させる筋肉(内側広筋、股関節内転筋群、大殿筋{下方筋束}、大腿筋膜張筋)の過緊張がX脚形成の一機序となります。
しかし、上述したように内側広筋は赤筋繊維保有量が多く筋委縮しやすい特徴がある上、内側広筋は走行上、内転筋膜を介して大内転筋に付着します。
内側広筋の筋萎縮に付随し内転筋膜を介して連結している大内転筋の筋力・筋出力が発揮し難くなります。
大内転筋は股関節内転筋群の中で股関節内転の貢献度合いが1番高い筋肉です。筋力・筋出力が発揮し難くなると股関節内転作用は低下します。
その場合、大殿筋(下方筋束)と大腿筋膜張筋の過緊張で膝外反モーメントを発生させX脚を形成することになります。
しかし大殿筋(下方筋束)と大腿筋膜張筋だけでは、O脚を形成するモーメントを生み出す股関節外旋筋の過緊張に力負けします。
その結果、膝関節内反方向へのモーメントが発生するためX脚が少ないと推察されます。
まとめ
変形性膝関節症でなぜO脚が形成されやすくX脚は形成されにくいのかの理由を中心に記載しました。
変形の進行は関節軟骨の摩耗で生じますが、摩耗する部位の決定因子に筋緊張異常や筋力低下、筋委縮が密接に関与します。
赤筋繊維保有量が多い筋肉は退行性変化に付随する臥床時間増大に伴い委縮が急速に進行します。
リハビリアプローチで姿勢矯正する場合は低負荷高頻度で赤筋繊維を鍛え張力と筋力を担保することが重要です。
変形性膝関節症に対する具体的なリハビリアプローチはこちらです。お時間があったら閲覧ください。