症例報告(抄録)の書き方を理学療法の単一事例を基に説明

理学療法士のスキルアップの登竜門の1つに症例報告(抄録)が存在します。

症例報告の書記スキル(抄録作成)は院内学術や学会発表で必須です。

今回は症例報告(抄録)の書き方を理学療法の単一事例を基に説明します。

余談ですが、多くの研究は抄録作成前に研究内容が倫理的に問題ないことを証明するため研究報告書を作成し倫理審査委員会の承諾を得る必要があります。

研究報告書と抄録は目的・意義・方法・結果等、記載内容が重複する項目も多く、その際にも下記で記載する項目を参照して頂ければと思います。

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症例報告(抄録)とは?

症例報告(抄録)とはリハビリアプローチや事象を簡素化かつ集約化した文章です。

例えば単一事例報告の場合、単一事例の疑問に思った事象に対しリハビリアプローチを展開し改善できたか否かを要約した書面が症例報告(抄録)となります。

症例報告(抄録)の書き方

まず症例報告(抄録)の構成と内容を以下に記載します。

構成と内容が把握できれば書面化が円滑に進みます。

症例報告(抄録)の構成

抄録は8項目で構成されます。

①タイトル(サブタイトル)

②背景

③目的

④対象

⑤説明と同意

⑥方法

⑦結果

⑧考察

必要に応じ項目を追加しても良いですが症例報告(抄録)は最大文字数が決まっている場合がほとんどです。

項目数が多ければ多い程、要約すべき項目数が増大し情報過多となる可能性があるため個人的には推奨しません。

症例報告(抄録)の構成を解説

症例報告(抄録)を構成する8項目に関して記載します。

タイトル

タイトルは症例報告の内容を反映する重要な項目です。

理想のタイトルは閲覧しただけで大まかな内容が想像できることです。

例えば「下腿三頭筋の筋緊張亢進を呈した脳卒中片麻痺者に対するリハビリアプローチ」というタイトルでは、リハビリアプローチの具体性が乏しいです。

タイトルのつけ方は以下の3点のポイントを抑えると意識しやすいかと思います。

・対象者

・対象者の問題点

・問題点への具体的アプローチ方法

上述した例では「脳卒中片麻痺者における筋緊張亢進を認めた下腿三頭筋の緊張緩和にⅠb抑制テクニックは有効か?」などです。

背景

タイトルに取り組もうと考えた事象を簡潔に記載します。

院内学術や学会発表に至ろうと考えた経緯とも言えます。

対象者の問題点に対し展開したリハビリアプローチは先行研究になく効果判定を行う必要性があると考えた等です。

目的

症例報告の目的を具体的に記載します。

具体的には以下の3点を記載します。

・対象者の問題点に焦点をあてた理由

・問題を改善するアプローチを選択した理由

・アプローチを展開した結果、証明したい事象

対象(症例紹介)

対象者に関する必要な情報を記載します。

症例報告の内容にもよりますが最低限記載すべき情報は以下の3点です。

・基本情報

・身体・精神機能

・動作能力

説明と同意

研究の実施にあたり、対象者に同意を得たことと、倫理審査委員会の承諾を得たことを記載します。

記載されていない症例報告(抄録)も散見されますが、発表者の身を守る上でも説明と同意の項目は記載することを強く推奨します。

方法

問題点を改善すると考えたアプローチ方法の具体的な手順に関して記載します。

症例報告の内容にもよりますが、概ねアプローチ方法の概要と手順メインアウトカム(結果となる具体的な指標のこと)を記載します。

結果

問題点に改善すると考えたアプローチ方法を実施した結果、メインアウトカムがどのように変化したかを記載します。

客観的数値を用いて簡潔に記載すると閲覧者が理解しやすいです。

考察

結果に対する理由を記載します。アプローチが有効とは言い難い場合もその理由を記載します。

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理学療法の単一事例を基に症例報告を理解する

理学療法の単一事例を用いて症例報告の理解を深めていきます。

以下に理学療法の単一事例と単一事例に対する症例報告(抄録)の書き方を記載します。

具体例:

理学療法評価にて患者が移乗動作見守りレベルの能力を有しているにも関わらず夫が過剰介助で行っており腰痛が出現している単一事例。

 

この単一事例の問題点はセラピストと夫の介助技術の差異です。

その介助技術の差異を消失させる方法として〇アプローチの〇効果が有用ではないかと考えたとします。

単一事例の症例報告

【タイトル】

〇アプローチは患者家族の介助技術向上に役立つか 

~移乗動作介助技術の向上を目指して~

【はじめに(背景)】

本研究は患者を家族(夫)対象とした単一事例報告である。

夫は移乗動作介助を過剰介助で実施し中等度介助を要していた。

【目的】

本研究の目的は、患者の夫に対し〇アプローチを実施することで移乗動作の介助量軽減が図れるか否かを明らかにすることである。

【対象(症例紹介)】

患者:年齢〇歳代、現病歴〇、既往歴〇。

患者の夫:年齢〇歳代。移乗動作介助時に腰痛あり。

患者の身体機能:(移乗動作に関与する項目を記載)。

患者の精神機能:MMSE〇点。夫の指示理解可能。

患者の動作能力:FIM移乗動作5点。

夫の移乗動作介助:中等度介助。

夫の腰痛の程度:安静時NRS1/10、移乗動作介助時6/10。

【説明と同意】

本研究の内容に関して対象者に同意を得た。

また当院倫理審査委員会の承諾を得て実施した(承諾番号〇)

【方法】

介入期間は〇週間(週〇回介入、〇分/回)とした。

具体的内容は、夫による移乗動作介助前にセラピストが〇アプローチに基づく〇を夫に指導し〇を是正した。

メインアウトカムは移乗動作の介助量と夫の腰痛の程度とした。

【結果】

介入後、夫の移移乗動作介助量は見守りで可能となった。

夫の腰痛は安静時NRS1/10、移乗動作介助時NRS1/10に改善した。

【考察】

〇アプローチは〇という効果がある。

〇効果により〇が消失することで過剰介助が是正され移乗動作介助量軽減が図れたことが示唆された。

※上述した具体例では、患者が有する移乗動作能力をFIM、夫とセラピストの介助技術の差異を移乗動作介助量で示しました。

※客観的数値を用いることで読み手の理解が深まります。

まとめ

症例報告(抄録)の書き方を理学療法の抄録を例に説明しました。

症例報告(抄録)は以下の3本柱が明確化すれば霧が晴れたように書けます。

①自身が疑問の感じた事象

②事象が生じている原因

③原因を改善するリハビリアプローチ

院内学術や学会発表は身体的・精神的に大変な作業ですが、発表当日を楽しめるよう質の高い症例報告(抄録)を目指しましょう。

臨床研究の理解が深まる一冊

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